フルヤ金属は2025年3月17日、新しい環境触媒を開発したと発表した。新しい環境触媒はルテニウム粒子をメソポーラスシリカ(SiO2)に担持した構造で、酸性とアルカリ性のいずれのガスも除去できる。
同社は環境省の環境実証事業(ETV)でこの触媒の効果を実証し、発売を決めた。同社では家庭向け消臭キットの販売に加えて、食品製造や半導体/エレクトロニクス工場、病院といった産業用の脱臭装置に向けて同触媒を訴求する考えだ。
新しい環境触媒の特徴
臭いの原因となるガスは、酸性とアルカリ性に分別される。そのため、酸性ガスの消臭にはアルカリ性の薬剤、アルカリ性ガスの消臭には酸性の薬剤を用いて、中和する必要がある。しかし、実際には酸性のガスとアルカリ性のガスが混合していることが多いことから、より汎用性の高い消臭方法が求められていた。一般的な脱臭剤として利用されている活性炭は定期的な交換が必要で、交換後は焼却廃棄されていたことからCO2が発生することも難点だった。
今回フルヤ金属が開発した悪臭除去触媒は、同社が培ってきた希少金属を取り扱う技術を生かしルテニウムを使用しているが、一般的な脱臭剤よりも長期にわたり効果が持続し、リサイクルも可能だ。この触媒はアンモニア、トリエチルアミン、メチルメルカプタン、硫化水素、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒドといった6種類の悪臭ガスを室温で除去できる。消臭触媒として利用する時に電力や光などのエネルギーを使わないため環境にも優しい。
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