水分解光触媒の水素生成面だけに微細な助触媒を担持する技術を開発:研究開発の最前線
東北大学は、粒径1nm程度の微細な助触媒を、水分解光触媒上で水素ガスを生成する結晶面だけに選択的に担持する技術「結晶面選択的ナノクラスター担持法」を開発した。
東北大学は2024年10月7日、粒径1nm程度の微細な助触媒を、水分解光触媒上で水素(H2)を生成する結晶面だけに選択的に担持する技術「結晶面選択的ナノクラスター担持法(F-NCD法)」を開発したと発表した。東京理科大学、三菱マテリアルとの共同研究による成果だ。
研究グループはこれまでに、粒径1nm程度の微細な金属ナノクラスター(NC)を合成し、粒径を保ったまま光触媒上に担持するNCD法を確立している。同手法では結晶面に対して無作為に助触媒が担持されるため、今回の研究では、H2生成面だけにH2生成助触媒を担持する手法を検討した。
具体的には、光触媒母体(18面体チタン酸ストロンチウム:18-STO)の酸素(O2)生成面に有機物を添加し、助触媒前駆体(Rh錯体)の化学吸着を抑制した。その後、300℃の焼成により配位子を除去し、光照射でH2生成面に対するRh錯体の吸着率を高めた。
その結果、粒径1.2±0.2nmの微細なロジウム(Rh)・クロム(Cr)複合酸化物(Rh2-xCrxO3)助触媒を、18-STOのH2生成面である{100}面に対して88%の選択率で担持に成功。水分解光触媒活性は従来のPD法やIMP法による光触媒に比べ、それぞれ2.6倍と14倍を示し、NCD法よりも1.5倍に高められた。
F-NCD法は、他の光触媒やNCsにも適用できる。また18-STOは、主成分ではない遷移金属などを微量添加する異種金属ドープにより、活性向上や可視光応答化も可能だ。今後、F-NCD法と組み合わせることで、高効率な水分解光触媒の創出が期待される。
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