Boston Dynamics創業者が語る ロボットづくりの本質:3DEXPERIENCE World 2025(3/3 ページ)
Boston Dynamicsの創業者であるマーク・レイバート氏が、ダッソー・システムズ主催の「3DEXPERIENCE World 2025」の基調講演に登壇。自身が歩んできたロボット開発における探究の道のりや、ロボットづくりの本質について語った。
人間の作業を観察し、理解し、実行できるロボットの実現へ
レイバート氏が創業したBoston Dynamicsは、Alphabet(Googleの持ち株会社)、ソフトバンクグループを経て、2021年から韓国の現代自動車グループ(Hyundai Motor Group)の下にある。
レイバート氏自身は2022年にBoston DynamicsのCEO(最高経営責任者)を退き、取締役に就任。現在はRobotics and AI Institute(RAI Institute)でロボティクスとAIの研究を進めている。「物理と知性の密接な結合が重要で、真の進歩はそこにあると考えている」とレイバート氏は語る。
RAI Instituteでレイバート氏が取り組んでいることの1つが、「Watch-Understand-Do」(観察/理解/実行)だ。ロボットのタスクをプログラマーがプログラミングするのではなく、人間がタスクをこなす様子をロボットが観察し、必要なスキルを理解/学習して、実行するというアプローチだ。レイバート氏は「OJT(On the Job Training)のようなものだ」と例えた上で、「現在、これはSF(サイエンスフィクション)の段階だが、今後数年間で実現したい。そして、産業用途だけでなく将来的には家庭向けにも適用していく考えだ」(レイバート氏)と意気込む。
また、レイバート氏はLLM(大規模言語モデル)や基盤モデルがロボットの開発に役立つ潜在性があるとしながら、インターネット上の情報を基にした現在のAIモデルはニーズを満たせないことから、「特化した独自のAIモデルの開発を進めている」(レイバート氏)という。
RAI Instituteでの取り組みの一例として、レイバート氏は通常の走行や停止だけでなく、ウィリーやジャンプ、回転などのトリックが可能な自律型のパルクール自転車「Ultra Mobile Vehicle(UMV)」のプロジェクトを紹介した。前輪と後輪のみで絶妙にバランスをコントロールしているが、ここには強化学習のアプローチが生かされているという。なお、設計および解析には、SOLIDWORKSをはじめとするダッソー・システムズのソリューションが活用されている。
さらに、Spotの高速化にも取り組んだ。SpotのAPIを通じてRAI Instituteで開発した強化学習を適用し、高いパフォーマンスを実現するというものだ。リリース当時で毎秒1.6mだった最高速度が、高速化により同5.2mと3倍以上アップしたという。
ロボット開発におけるハードウェアと、AIをはじめとするソフトウェアとのバランスについて、レイバート氏は「ハードウェアの人間は物理的な世界がどのように機能するのかを熟知しており、ソフトウェアはそれを具現化する必要がある。どちらも進歩しており、同じ場所で一緒に働くことで、最も高速に作業(ロボット開発)を進めることができる」と持論を展開した上で、「その方が楽しい!」と笑う。
3DEXPERIENCE World 2025 現地レポート
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