電子顕微鏡が日立ハイテクの新たな第3の柱を生み出す、測長SEMや医用機器に続け:モノづくり最前線レポート(2/2 ページ)
日本における電子顕微鏡開発の歴史で重要な役割を果たしてきた日立。同社の電子顕微鏡事業を継承する日立ハイテクは、測長SEM、医用機器に続く新たな第3の柱となる事業を生み出すべく、電子顕微鏡をはじめとする解析装置や分析機器から成るコアテクノロジーソリューションの事業展開を強化している。
半導体、材料、ヘルスケアを第3の柱の候補に
それでは、コアテクノロジーソリューションから創出を目指す新たな第3の柱になる事業にはどのようなものがあるのだろうか。瀬戸口氏が主な顧客分野として挙げるのが、半導体、材料、ヘルスケアの3つである。
半導体については、先述した通り製造プロセスにおいて測長SEMが広く利用されている。ただし、測長SEMはウエハー上に作り込んだ回路パターンの線幅をリアルタイムで計測してインラインで検査をするための装置である。製造プロセスが1桁nmに到達するなど微細化が進む中で、測長SEMによるインライン検査だけでは不具合や歩留まり低下の原因を究明するのは難しくなっている。
そこで、FE-SEMやTEM、STEM(走査透過電子顕微鏡)などオフラインの計測検査装置を組み合わせたソリューションを提案していく。瀬戸口氏は「これまでは工場内のインライン検査と、ラボ内でマニュアルで行うオフライン検査は別々に分かれており、組み合わせ提案がしやすいとは言えなかった。しかし、日立のデジタルソリューション群『Lumada』の活用でインライン検査とオフライン検査のデータ連携を自動化したソリューションの提供を目指している。インラインとオフラインの中間に位置するニアラインのソリューションとしての構築が重要になってくるだろう」と強調する。
材料の研究開発では、これまでも電子顕微鏡などの解析装置が広く利用されてきたが、半導体と同様にその材料を用いて製造される最終製品の量産工程にどのように関わっていくかという視点を持った取り組みが重要になってくる。
代表的な事例になるのがリチウムイオン電池である。正極/負極の活物質、バインダー、セパレーター、金属箔、電解液などさまざまな材料から構成されるリチウムイオン電池だが、これら個別の材料を開発するプロセスに加えて、これらの材料を組み合わせて電池セルに組み上げていく製造プロセスでの評価、リチウムイオン電池の不具合で最も大きな要因と異物混入の検査、さらには完成した電池セルや複数の電池セルから成る組電池の状態での不良解析まで一貫してサポートできるとする。「リチウムイオン電池の生産では、可能な限り上流で課題を見つけ出して早期に解決したいと考えている。このトータルソリューションであれば貢献できると考えている」(瀬戸口氏)という。
ヘルスケアについては、ヘルスケアソリューションや分光技術を基にした分析機器がより力を発揮するように思えるが、nmオーダーの分解能を持つ電子顕微鏡が必要になる場合もある。瀬戸口氏は「感染症の病原体同定ではTEMによる形態学的診断が役立つことも多い。創薬プロセスなどで活用できるので、ヘルスケアソリューションと連携する形で提案を進めていきたい」と述べている。
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