日立ハイテクのオーケストレーションが「One Hitachi」の原動力に:日立の新成長エンジン「コネクティブ」の全貌(4)(1/3 ページ)
日立の製造業としての側面を色濃く残すコネクティブインダストリーズ(CI)セクターに迫る本連載。第4回は、半導体製造装置/計測装置や医用機器/ライフサイエンス機器を主力事業とする日立ハイテクをクローズアップする。
本連載の第2回では日立インダストリアルプロダクツ、第3回では日立産機システムを取り上げた。日立製作所(以下、日立)のコネクティブインダストリーズ(CI)セクターにおいて両社は、前身に当たるインダストリーセクターから所属する“古株”の子会社だ。
今回紹介する日立ハイテクは、2023年4月のCIセクター発足時に加わった“新顔”となる。ただし、インダストリーセクター時代から培ってきた、日立が強みを持つプロダクト(製品)を中核としながら、これらをデジタルでつなぐことで現場や経営の課題を解決する「トータルシームレスソリューション」をより強く生かすことが可能な事業を展開しており、CIセクターのみならず日立の成長をけん引することが期待されている。
連載『日立の新成長エンジン「コネクティブ」の全貌』
日立の事業を構成する3つのセクターのうち、同社の100年以上の歴史の中で培ってきたモノづくりの力を中核にIT(情報技術)×OT(制御技術)×プロダクトの施策を推進しているのがコネクティブインダストリーズ(CI)セクターである。本連載『日立の新成長エンジン「コネクティブ」の全貌』では、日立の製造業としての側面を色濃く残すとともに、デジタルやグリーンなどとの連携によって成長を目指す多彩な事業を抱えるCIセクターの強みについて、それぞれの事業体の特徴や生み出す新たな価値を中心に紹介する。
専門商社の日製産業が製販一体化により日立ハイテクへ
日立ハイテクの事業は、日立の決算発表の中ではCIセクターの計測分析システムというセグメントに対応している。2024年度連結業績見通しにおける同セグメントの売上高見込みは7600億円で、エレベーターなどを扱う日立ビルシステムに次ぐ2番目の規模となっている。
日立ハイテクの事業は大まかに4つに分けることができる。まず、売上高の観点で2本柱となっているのが、半導体製造装置/計測装置を手掛けるナノテクノロジーソリューションと、医用機器/ライフサイエンス機器を扱うヘルスケアソリューションである。さらに、日立ハイテクの源流に関わるのが、日立の専門商社として培ってきたビジネス創生力を生かして顧客の課題解決に貢献するバリューチェーンソリューションと、ナノテクノロジーとヘルスケアの両ソリューションの基盤といえる解析と分析のコア技術を基に解析装置や分析機器を展開するコアテクノロジーソリューションだ。
日立ハイテクの沿革は、バリューチェーンソリューションの紹介でも言及した通り、日立グループの専門商社として1947年に発足した日製産業から始まる。この日製産業が専門商社として販売していたのが、国産初の商用化を果たした電子顕微鏡や世界で初めて商用化したFE-SEM(電界放出形走査電子顕微鏡)などに代表される理化学機器や工業計器、そして産業機器、材料などである。
2001年、日製産業が販売してきた製品の開発と生産を担っていた日立の計測器事業、半導体製造装置事業を承継して誕生したのが日立ハイテクノロジーズだ。この時点で、研究開発向けの機器である電子顕微鏡や分光光度計の技術を基にした事業として、半導体製造装置/計測装置と医用機器/ライフサイエンス機器の事業が既に大きな規模に育っており、同社の発足による製販一体体制の構築は必要不可欠な状況にあった。
2020年には社名を日立ハイテクノロジーズから日立ハイテクに改めるとともに、日立の完全子会社となった。そして2024年には、日立のヘルスケア事業を会社分割によって承継している。
国内製造拠点は、那珂地区と那珂地区マリンサイト(茨城県ひたちなか市)、笠戸地区(山口県下松市)、日立ハイテクソリューションズ埼玉事業所と日立ハイテク埼玉サイト(埼玉県上里町)、日立事業所(茨城県日立市)、青梅事業所(東京都青梅市)、放射線治療システム柏の葉事業所(千葉県柏市)、日立ハイテクソリューションズ水戸事業所(茨城県水戸市)、日立ハイテクサイエンス富士小山事業所(静岡県小山町)、日立ハイテク九州(福岡県大牟田市)などとなっている。
これらの中でも、茨城県ひたちなか市に位置する那珂地区は、日立ハイテクが手掛ける製品や技術の研究開発から製造までを広くカバーする主要拠点となっている。
那珂地区では、コアテクノロジーソリューションによる解析と分析のコア技術の事業展開をさらに積極的に推し進められるように、顧客向けデモンストレーションおよび協創拠点となる「アドバンストテクノロジーイノベーションセンター那珂(ACN)」を2022年5月に開設した。
また、2021年3月には、ナノテクノロジーソリューションの主力製品の一つである測長SEMなど半導体計測装置の開発と製造を担う新拠点として、那珂地区からほど近い位置に那珂地区マリンサイトを開設した。DX(デジタルトランスフォーメーション)とIoT(モノのインターネット)活用の推進によって最新鋭のスマートファクトリーとなっているだけでなく、屋上に設置した太陽光発電パネルを含めた再生可能エネルギーの利用で完成当初からCO2排出量のゼロを実現している。
次ページからは、日立ハイテク 代表取締役 取締役社長の飯泉孝氏のインタビューをお送りする。
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