データを生みだすプロダクトの価値をさらに高める、日立産機が描く勝利の方程式:日立の新成長エンジン「コネクティブ」の全貌(3)(1/3 ページ)
日立の製造業としての側面を色濃く残すコネクティブインダストリーズ(CI)セクターに迫る本連載。第3回は、中量産の産業機器事業を展開する日立産機システムをクローズアップする。
本連載の第2回では、日立製作所(以下、日立)のコネクティブインダストリーズ(CI)セクターで大型産業機器を手掛ける日立インダストリアルプロダクツを取り上げた。この日立インダストリアルプロダクツに先行する形で、日立の中量産の産業機器を集約して2002年に発足したのが日立産機システムである。
現在、同社は、環境に配慮した高性能のグリーンプロダクトの開発や、それらにデジタル技術を掛け合わせることでサーキュラーエコノミーに貢献するリカーリングビジネスモデルを推進している。今回は、この日立産機システムをクローズアップする。
連載『日立の新成長エンジン「コネクティブ」の全貌』
日立の事業を構成する3つのセクターのうち、同社の100年以上の歴史の中で培ってきたモノづくりの力を中核にIT(情報技術)×OT(制御技術)×プロダクトの施策を推進しているのがコネクティブインダストリーズ(CI)セクターである。本連載『日立の新成長エンジン「コネクティブ」の全貌』では、日立の製造業としての側面を色濃く残すとともに、デジタルやグリーンなどとの連携によって成長を目指す多彩な事業を抱えるCIセクターの強みについて、それぞれの事業体の特徴や生み出す新たな価値を中心に紹介する。
亀戸工場がルーツに
日立の決算発表において、CIセクター内のセグメントはビルシステム、生活・エコシステム、計測分析システム、インダストリアルデジタル、水・環境、インダストリアルプロダクツの6つに分けられている。これらの中で産業機器製品関連事業のセグメントになっているのがインダストリアルプロダクツであり、中量産製品を扱う日立産機システムと、大型製品を担う日立インダストリアルプロダクツから構成されている。なお、2024年度連結業績見通しにおけるインダストリアルプロダクツセグメントの売上高見込みは5110億円である。
日立産機システムの取り扱い製品は、工場の生産ライン稼働に欠かせない空気圧縮機(コンプレッサー)に代表される空圧機器システム、産業用インクジェットプリンタなどのマーキング機器・システム、モーターやインバーター、ACサーボから成るドライブシステム、低圧から特別高圧まで対応する受変電・配電システム、設備の制御やデータ収集に欠かせないIoT(モノのインターネット)コントローラ・機器など多岐にわたる。
日立産機システムの沿革は、1907年に久原鉱業所の付帯事務所が東京佃島機械製作所として発足したところから始まる。この東京佃島機械製作所は、1920年に日立工場とともに日立の傘下に入った亀戸工場(東京都江東区)の前身となっており、空圧機器システムをはじめとする日立産機システムが扱うさまざまな産業機器製品は亀戸工場がルーツになっている。例えば、清水事業所や習志野事業所は、亀戸工場で生産していた製品を移管する形で発足している。なお、亀戸工場は1974年に中条工場(現在の中条事業所)に移転しており、現在は存在しない。
1999年に日立内に産業機器グループが発足し、関連の営業部門や子会社を統合して2002年に誕生したのが日立産機システムである。2005年に、日立ホーム・アンド・ライフ・ソリューション(現在の日立グローバルライフソリューションズ)が多賀工場(現在の多賀事業所)で生産していた産業用インクジェットプリンタ事業が移管されており、その後も日立グループ内からさまざまな産業機器関連の事業が移管され製造拠点も拡大している。
主要な製造拠点は、中条事業所(新潟県胎内市)、多賀事業所(茨城県日立市)、勝田事業所(茨城県ひたちなか市)、土浦事業所(茨城県土浦市)、習志野事業所(千葉県習志野市)、相模事業所(神奈川県綾瀬市)、清水事業所(静岡市清水区)の7拠点だ。
このうち亀戸工場の歴史を受け継ぐ中条事業所は、受変電・配電システムの中核工場となっている。亀戸工場の移転から50周年を迎えた同事業所だが、2024年4月に発表した三菱電機の配電用変圧器事業の買収によって新たな局面を迎えつつある。
中条事業所が生産する配電用変圧器で強みになっているのが、アモルファス合金製の鉄心を用いることで電力損失が小さく高効率なアモルファス変圧器である。近年はカーボンニュートラルへの対応もあり、この高効率のアモルファス変圧器の需要が高まっている。さらに、絶縁油を鉱油から植物由来の大豆油に変更した製品も開発しており、カーボンニュートラル対応という観点ではさらに大きな効果が得られる。日立産機システムが重視する“環境に配慮した高性能のグリーンプロダクト”の代表例となっているのだ。
三菱電機の配電用変圧器事業の買収では、同社の名古屋製作所(名古屋市東区)から関連する人材/資産を中条事業所に移管することになる。2026年度からスタートする配電用変圧器のトップランナー基準強化に対応すべく、2026年4月1日の買収完了に向けて両社の配電用変圧器事業の融合を進めていく方針である。
次ページからは、日立産機システム 取締役社長の竹内康浩氏のインタビューをお送りする。
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