ナノ積層フィルムの技術を応用し厚み50μmのウィンドウフィルムを開発:材料技術
東レは、高い透明性と遮熱性を備えたナノ積層フィルム「PICASUS(ピカサス) IR」の技術を応用して、50μm厚のウィンドウフィルムを開発し、発売した。
東レは2025年3月11日、高い透明性と遮熱性を備えたナノ積層フィルム「PICASUS(ピカサス) IR」の技術を応用して、50μm厚のウィンドウフィルムを開発し、発売したと発表した。
PICASUS IRは、新築や既存の建物を問わず、窓ガラスに取り付けることで遮熱性を高められる積層フィルムだ。透明性基準の高い自動車フロントガラスにも適用可能であり、かつ一部で採用される金属スパッタ技術の課題である5G通信へも対応する優れた電波透過性も備えており、ドライバーに安全で快適な空間を提供する。
高遮熱タイプの顧客評価も本格化
東レは、ナノスケールの厚みのポリマー層を数百〜千層重ねることができる独自のナノ積層技術を深化させることで、透明性と遮熱性に優れたナノ積層フィルムのPICASUS IRを開発し、自動車に初期搭載されるフロントガラスやサンルーフ向けに展開してきた。
今回、PICASUS IRの技術を応用し、建築物や自動車の窓に後から貼り付けるウィンドウフィルム向けとして業界標準の50μm厚となるスタンダードタイプのナノ積層フィルムを開発し、発売した。このスタンダードタイプは高い透明性と遮熱性を有す。さらに、同等レベルの遮熱性を有する市販品と比較してナノ積層の各ポリマー層間の密着力が良好なため、施工時のリワーク性にも優れる。
また、ユーザーからの遮熱性能向上の要求に応えるべく、高い透明性はそのままに、さらに遮熱性をスタンダードタイプと比べて40%向上させた高遮熱タイプの顧客評価も本格化し、ラインアップの拡充を進めている。
ウィンドウフィルム向けで展開する背景
近年、省エネルギー化の要請や夏場の気温上昇を背景に、遮熱性に優れたウィンドウフィルムの需要が高まっている。中でも、建築物の美観や室内からの景観を損なわないことや、自動車の視認性を確保する必要があることから、遮熱性に優れながら、透明性が高いウィンドウフィルムのニーズが増えている。
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