自然界のわずかな動きで発電する電磁誘導発電モジュールを開発:組み込み開発ニュース
三菱電機は、自然界のわずかな動きで効率的に発電する電磁誘導発電モジュールを開発した。そよ風や弱い水流、人が床を踏む動きなどで発電できるため、設置が困難だった場所にもIoTセンサーを導入可能になる。
三菱電機は2025年2月12日、自然界のわずかな動きや人の動作を利用して効率的に発電する、電磁誘導発電モジュールを開発したと発表した。
開発したモジュールは、そよ風や弱い水流、人が床を踏む動きなどを活用して発電できる。配線と電池交換が不要で、数mW程度の低消費電力の機器やセンサー向け電源として活用できるため、これまで設置が困難だった場所にもIoT(モノのインターネット)センサーを導入可能になり、センシング技術の活用範囲が拡大する。
同モジュールは、独自の複合磁気ワイヤーを複数束ねたコアを使用したコイル型発電素子を用いて、発電素子にかかる磁界が増大するよう調整した磁気回路を搭載する。これにより、風や水流など非常に低速で軽い力の動きを利用した発電が可能となり、毎秒2〜3m程度のそよ風でも発電できる。
同社は同モジュールを用いて、床板の上を人が通過した際に発電する床発電装置を試作し、実証実験を実施した。その結果、同様の装置を圧電素子で構成した従来方式と比較して、100倍となる200mWの発電量が得られた。
床板と発電素子は非接触のため、従来の圧電素子の課題だった継続使用による劣化が発生せず、部品交換も不要となる。また、外部電源を使わない無線式IoTセンサーを接続して構築した「床発電システム」の実証実験では、床板を1回踏んだときの発電量で温度データを送信できることを確認した。
同社は今後、発電素子の形状や磁気回路のさらなる最適化と、IoTセンサー向け電源としての実証を進め、2027年度までの実用化を目指す。また、蓄電技術と組み合わせてIoTセンサーの代替電源とするなど、活用の幅を広げていく。
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