カーボンナノチューブの糸で熱電発電をフレキシブルに、東海理化がデモを披露:組み込み開発ニュース
東海理化は、「第3回 ネプコン ジャパン[秋]」において、東京都立大学と共同で進めているカーボンナノチューブ製の糸を用いた熱電発電技術の開発成果を披露した。従来の熱電発電素子では実現が難しい、モジュールと熱源間距離のフレキシブル性が特徴で、500m〜1Vの起電力を発生させられる展示デモも披露した。
東海理化は、「第3回 ネプコン ジャパン[秋]」(2024年9月4〜6日、幕張メッセ)において、東京都立大学と共同で進めているカーボンナノチューブ製の糸を用いた熱電発電技術の開発成果を披露した。従来の熱電発電素子では実現が難しい、モジュールと熱源間距離のフレキシブル性が特徴で、0.5〜1Vの起電力を発生させられる展示デモも披露した。
今回展示したのは、熱電発電素子におけるP型半導体とN型半導体、それぞれの特性を持つカーボンナノチューブ糸をフレキシブル基材に縫い込んだデバイスである。このカーボンナノチューブ糸は高配向、高電気伝導であり、高温側と低温側の間をP型とN型のカーボンナノチューブ糸を使ってつなげることで熱起電力を発生させることができる。そして、P型とN型のカーボンナノチューブ糸の対数を増やせば増やすほど熱起電力を高めることが可能になる。
展示ではP型とN型のカーボンナノチューブ糸を1000対備えるデバイスを用いて、熱起電力の電圧を示すデモを行った。展示台に当たっている低温側が20数℃の状態から、高温側に手を当てて体温(35〜6℃)まで上げることで約0.5Vの熱起電力を計測した。また、約0℃に冷やしたプレート上にデバイスを設置してから高温側に手を当てたところ、熱起電力の電圧は1Vを上回った。
一般的な熱電発電素子では、2種類の異なる金属もしくは半導体を接合した素子に温度差を設けることで電圧が発生する。この場合、熱電発電素子の近傍に温度差の元になる高温と低温を用意しなければならないが、いわゆる環境発電を行うのであれば、実際には高温と低温の距離(熱源間距離)を離したいことの方が多い。
カーボンナノチューブ糸による熱電発電は、P型とN型のカーボンナノチューブ糸を縫い込んだフレキシブル基材の両端に高温と低温を配置することで行える。つまり、従来のソリッドな素子を用いる必要がないので熱源間距離を離すことが可能になるというわけだ。「ただし、きちんと熱電発電が起こるようにするには、P型とN型のカーボンナノチューブ糸の配置や縫い込み方などに工夫がいる。自動車部品をはじめさまざまなモノづくりを手掛けてきた当社だからこそ実現できている」(東海理化の説明員)という。
東海理化は今回の展示を契機に顧客への提案を強化していく方針。早ければ2027年度にも顧客との実証実験を始めたい考えだ。
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