微弱な通信用電波で高効率に電力を生み出す実証試験に成功:研究開発の最前線
東北大学は、スピントロニクス技術を活用し、微弱な通信用電波で高効率に電力を作り出す実証に成功した。電池や電源を使わないエッジ端末への応用が期待される。
東北大学は2024年8月5日、スピントロニクス技術を活用し、微弱な通信用電波で高効率に電力を作り出す実証に成功したと発表した。先端スピントロニクス研究開発センター、シンガポール国立大学、メッシーナ大学との共同研究によるもので、電池や電源を使わないエッジ端末への応用が期待される。
研究チームは、微弱な高周波(RF)電波から高効率に直流(DC)電圧を獲得できる、ナノスケールの「スピン整流器」を開発。このスピン整流器は、実用化されている磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)で使われるCoFeB(コバルト、鉄、ホウ素)とMgO(酸化マグネシウム)からなる磁気トンネル接合で構成される。
作製したスピン整流素子は単体で、−62dBm(630pW)から−20dBm(10μW)のRF入力に対して10000mV/mW前後の効率でDC電圧生成を達成した。また、10個のスピン整流素子を直列接続すると、−50dBm(10nW)のRF入力に対して34500mV/mWの効率でDC電圧を生成できた。
これらの技術を基に、10個の直列接続したスピン整流素子を使用し、−27dBm(2.0μW)の強度の電波からの発電により、市販の温度センサーを稼働させる環境発電の実証実験に成功した。また、この特性が、磁気異方性が電圧によって変わる事象を介した自己パラメトリック励起によるものであることを突き止めた。
今回の実験では、スピン整流器の磁気トンネル接合の形状や磁気異方性、トンネル障壁の物性などをRF-DC変換効率を向上させるように工夫している。これにより、従来の研究より約3桁小さな強度の電波から電子機器の駆動に必要な電力を抜き出すことに成功した。
研究チームでは今後、単体素子レベルでのRF-DC変換効率アップ、オンチップアンテナとの集積化および素子の直列、並列接続の併用による大出力化を進め、同技術の実装化を目指す。
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