エナジーハーベストで海を見える化、京セラと長崎大学がスマートブイを共同開発:イノベーションのレシピ(1/2 ページ)
京セラと長崎大学は2021年7月14日、安定した海洋データの収集を目的とした「エナジーハーベスト型スマートブイ」を開発したことを発表した。同技術は京セラのIoT関連技術と長崎大学の潮流発電技術を組み合わせて実現した。
京セラと長崎大学は2021年7月14日、安定した海洋データの収集を目的とした「エナジーハーベスト型スマートブイ」を開発したことを発表した。同技術は京セラのIoT(モノのインターネット)関連技術と長崎大学の潮流発電技術を組み合わせて実現した。今後研究開発を進め2022年度(2023年3月期)中の実用化を目指す。
海洋開発で求められる「海の見える化」
周辺を海に囲まれる日本では海洋資源の活用への関心が高まっている。一方でマイクロプラスチックなどの海洋汚染や海水温上昇による気象変動が社会問題となっており、海の情報をより詳しくリアルタイムに把握する「海の見える化」の重要性が高まっている。しかし、海上で継続したデータ収集を行うには、安定した電源供給が最大の障壁となっていた。
この課題を解決し「海の見える化」を実現するために、京セラと長崎大学では、長崎大学が保有する潮流発電技術と京セラのIoT関連技術を組み合わせ、海洋データ収集に必要な電力をブイに搭載した潮流発電システムで賄う「エナジーハーベスト型スマートブイ」の開発に取り組んだ。そしてこのほど、試作機による実海域試験に成功したという。
エナジーハーベスト(環境発電)とは、身の回りにある自然な形で得られるエネルギーを採取して電力を得る各種技術のことだ。独立型電源の技術要素として注目されている。今回は海の中で自然に発生する潮流を電気に変えることで、その電力を使用してセンサーや通信機器などを稼働させる。電池交換なしに長期使用が可能になるということから注目を集めている。
長崎大学 海洋未来イノベーション機構 機構長の征矢野清氏は「海洋開発や社会課題の解決を進めるとしても、まず前提となるのは海の情報を知るということだ。海の情報をより広く継続的に集めるためには独立電源の確保が必要になる。エナジーハーベスト型のスマートブイはその課題を解決し『海の見える化』を実現する最初の一歩となる」と語っている。
また共同開発を行った京セラはIoTへの取り組みを強化しているが「京セラの強みはセンシング技術などを中心に取得困難なデータを取得できるようにすることだ。データを十分取得できていない潜在市場は数多く存在するが、その代表が海だと考えている。海のデータが集められればさまざまな価値が実現できる。研究成果をオープン化していくことで『海の見える化』を実現し、社会に貢献する」と京セラ 経営推進本部 IoT事業開発部 能原隆氏は考えを述べる。
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