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G-SHOCK初採用の「タフシリコーンバンド」は2つの開発テーマの融合で生まれたデザインの力(3/3 ページ)

カシオの腕時計「G-SHOCK」で新たに採用された「タフシリコーンバンド」は“金属調の樹脂バンドの実現”と“装着性と耐摩耗性の両立”という別軸で進められてきた2つの開発テーマが1つに合わさったことで誕生した。担当者に話を聞いた。

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ORIGINを継承しながらデザインの制約から解放

――FINE METALLIC SERIESではタフシリコーンバンドの採用に併せて、意匠やデザインの面でも工夫されたそうですね。

池津氏 金属調の蒸着による加飾で美しいミラー面を演出するために、バンドの形状をシンプルな面構成とした。具体的には「DW-5000/DW-5600シリーズ」などのバンドに見られる穴や中央の段をなくし、完全なフラット形状とした。オリジン(ORIGIN)のデザインやシルエットを継承しつつ、必要以上の要素を全て排除した。

「GM-5600YMG」のバンド部筆者私物のバンド部 (左)「GM-5600YMG」の上側のバンド形状。穴や段差をなくしたフラットな面構成となっている ※出所:カシオ計算機/(右)「DW-5040PG」の上側のバンド形状 ※筆者私物[クリックで拡大]

池津氏 また、細かい点となるが、G-SHOCKを象徴するバンドの波形状や丸いくぼみ(ディンプル)などについても、成形性を考慮し、ウレタンがシリコーンに追従できるよう、サンアロー側と協力しながら角度や深さをコンマ1mm単位で調整を図っている。バンド自体の厚みについても1mmほど増やし、肌触りが良くて柔らかいシリコーンの特性を生かしながら、上質さ/高級感を演出している。

「タフシリコーンバンド」ではバンドの波形状(凹凸部)やディンプルの角度、深さも見直した。また、バンド自体の厚みも通常より1mmほど増やしている
「タフシリコーンバンド」ではバンドの波形状(凹凸部)やディンプルの角度、深さも見直した。また、バンド自体の厚みも通常より1mmほど増やしている[クリックで拡大] 出所:カシオ計算機

齊藤氏 FINE METALLIC SERIESでは美しい金属調を追求しているが、バンド形状がシンプルになり、フラットな面が増えたことで、より大きな模様などをバンドのデザインに採用できる。また、穴がなくなったことでデザインの自由度も増した。タフシリコーンバンドによって、デザインを全面に生かしたラインアップの展開が可能になる。

 今回の開発では、遊環と尾錠についてもアップデートしている。FINE METALLIC SERIESのモデルでは、パートナー企業と協力し、新たにデザインした金属製のものを採用した。

実際に見て、触れて、驚いてもらいたい

――FINE METALLIC SERIESをどのような方に手にとってもらいたいですか?

齊藤氏 樹脂バンドの使用感をさらにアップデートし、かつ金属調に仕上げるという、タフシリコーンバンドで今できる最高レベルの品質のものをFINE METALLIC SERIESで実現した。G-SHOCKの新たなラインアップとして、幅広い層のお客さまに自信を持ってお届けできる。

 もしかすると、樹脂製のバンドにメッキを施していると思い込み、品質に対して不安を感じてしまう人もいるかもしれない。しかし、今回説明してきた通り、われわれのタフシリコーンバンドはそもそも作り方からして従来とは異なり、金属調の加飾が剥がれたり、ボロボロになったりする心配はほとんどない。何しろ、開発の過程でわれわれ自身も苦労した、厳しいG-SHOCK基準をクリアした商品だからだ。ぜひ店頭などで手に取って確認してほしい。

 メインターゲットとしている若者だけでなく、コアなG-SHOCKファンの方々も、開発に10年を費やした新しいバンドの出来栄え、FINE METALLIC SERIESの仕上がりにきっと驚くはずだ。また、今回は金属調のデザインだったが、今後登場するタフシリコーンバンドを採用した商品ラインアップにもぜひ期待してほしい。

ご覧のようにパッと見はフルメタルのG-SHOCKのように見えるが、遊環にバンドが通されているので樹脂製のバンドだと分かる
ご覧のようにパッと見はフルメタルのG-SHOCKのように見えるが、遊環にバンドが通されているので樹脂製のバンドだと分かる[クリックで拡大]

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