G-SHOCK級のタフネスさを備えた“IoTねじ”が三重苦に直面する現代社会を救う!?:「smartNeji」が目指すもの(1/3 ページ)
NejiLawとカシオ計算機が共同開発を進めている“IoTねじ”、「smartNeji」とは一体どのようなものなのか。NejiLaw 代表取締役社長で発明家でもある道脇裕氏、そしてカシオ計算機に、smartNeji開発の背景とその狙いについて話を聞いた。
2019年11月、高機能・高性能型産業用締結部材の開発/製造/販売/ライセンシングを行うNejiLawとカシオ計算機は、オープンイノベーション戦略に基づき、配線不要な耐衝撃構造のIoTねじ「smartNeji」の共同開発を開始したことを発表した。ねじは「産業の塩」ともいわれ、らせん構造によって締結するという機能は、産業のみならず、日常生活にもなくてはならない存在だ。そのねじをIoT(モノのインターネット)化することによって、“待ったなしの社会課題”を解決しようというのが、両社の取り組みだ。
橋りょう、トンネル、高速道路など、日本においてインフラ建設が盛んに行われてから50年以上。それらの老朽化は大きな問題となっている。例えば、道路橋は全国に約73万橋あり、国土交通省の発表によると、2033年に建設後50年を超える道路橋は約63%、実に約46万橋にもなるという。
一方、自然災害レベルの増大は世界的に進んでいる。地震の他、さまざまな自然災害とともに暮らしている日本だが、近年台風は巨大化し、豪雨や暴風なども過去に経験がないほどの規模になっている。
近い将来、南海トラフ地震や首都直下型地震の発生が確実視される中、老朽化した建造物の補修は急を要する。しかし、損傷の程度を確認したり、補修の優先順位を決めたりするには、綿密な点検や調査が必要だ。しかも労働人口は減少し、施工やメンテナンスの作業者も、ノウハウを持った人材もますます減少していく。
いわば“三重苦”のような課題を解決するには、老朽化したインフラをはじめ、さまざまな構造体の維持管理を容易に、かつ精度を高めつつ、強靱(きょうじん)化することについて、より少ない人数とノウハウで可能にする必要がある。「今までのように時間をかけていられない状況を技術で革新できないか」と、NejiLaw 代表取締役社長で発明家でもある道脇裕氏が考案したのが“ねじのスマート化”、つまりsmartNejiだ。
ねじ自体がセンサーとなり、データを送信
smartNejiとは、どのような機能、性能を持ったねじなのか。
smartNejiは、道脇氏の発明を基に、NejiLawが独自開発した高集積・高感度センサー構造により、ねじ自体をマルチセンサー化したもので、締結部における情報を無線収集できる。ねじの微細な応力変化を測定するために、良導体である鉄を一度絶縁し、そこに再構築する形で応力を測定する技術も開発した。ねじ頭部には、低消費電力回路、低消費電力無線通信機能が装備され、給電、データ送信を行う。
重要なポイントは、「ねじ自体がセンサー」であるということだ。ねじの内部に別部品を組み込むわけではないので、穴も隙間も一切ない。頭部の回路も面で一体的に装着されているため、締結部品としての強度や性能が損なわれることはない。構造物の要所にsmartNejiを使用し、接合部に集中する応力やひずみを計測、分析すれば、構造物全体の健全性や問題点などを知ることができるわけだ。
また、ねじはあらゆる構造物の接合部に使用されるため、工場、プラント、発電所、送電網、水道網、ガス管網、鉄道網、道路網、自動車、大型車両、船舶、航空機、ロケット、ロボット、産業機械、建機、ビル建物、住宅家屋など、幅広く活用できる。新築時はもちろん、既存の構造物でも、一部のねじをsmartNejiに交換すればよい。
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