G-SHOCK級のタフネスさを備えた“IoTねじ”が三重苦に直面する現代社会を救う!?:「smartNeji」が目指すもの(2/3 ページ)
NejiLawとカシオ計算機が共同開発を進めている“IoTねじ”、「smartNeji」とは一体どのようなものなのか。NejiLaw 代表取締役社長で発明家でもある道脇裕氏、そしてカシオ計算機に、smartNeji開発の背景とその狙いについて話を聞いた。
「smartNeji」の実現を支える技術
センサーであるねじが緩んでしまっては、正確な測定はできないが、NejiLawは“緩むことのない”ねじ「L/Rネジ」という技術も持っている。
一般的なねじは摩擦力によって緩みを抑制するが、L/Rネジは摩擦力には頼らず、機械構造的な原理で緩みを止めている。L/Rネジのボルトのねじ部には通常のらせん構造はなく、右らせんと左らせんを組み合わせたような特殊な形状が刻まれている。そのボルトに、右ねじナットと左ねじナットを螺合(らごう)することにより、それぞれが締め付け力を誘導。さらに、2つのナットを機械的に結合することで「緩まない構造」、言い換えれば「外せない構造」を実現している。これも道脇氏が考案した発明のうちの1つ。このL/Rネジの基本的な構造をベースに、緩まないが外せる「リムーバブルロックタイプ」や、1つのナットを螺合する「シングルナットタイプ」なども開発されている。
もう1つ重要なことは、演算や通信の回路が衝撃や風雨などの悪環境にも耐えられることだ。ここは、カシオ計算機が1983年より販売している耐衝撃腕時計「G-SHOCK」で培ってきた、タフネス技術が活躍する。ねじは非常に過酷な環境で使われることも多いため、カシオ計算機の小型/省電力無線電子回路技術、耐衝撃/耐振動性/防水/広許容温度範囲の技術は必須だ。カシオ計算機 執行役員 開発本部 副本部長 兼 時計開発統轄部長の河合哲哉氏は「smartNejiの要求レベルは、G-SHOCKよりかなり高い。新たな考えも入れていく必要がある」とチャレンジに意欲的だ。
また、カシオ計算機には、生産や物流という役割も期待されており、モジュール企画、ハードウェア、ソフトウェア、機構、外装から、生産技術、品質保証まで、製品の開発、生産に必要な全ての人材が参画した“ドリームチーム”を結成し、smartNejiの開発プロジェクトに臨んでいる。いずれもG-SHOCKに関わってきた経験豊富な人たちで、期待の大きさが伺える。
smartNejiプロジェクトの立ち上げ当初から参画して、主にモジュール企画を担当し、カシオ計算機側のトータルマネジメントも担っている、カシオ計算機 羽村技術センター 開発本部 時計開発統轄部 推進企画室 室長の西尾豊一氏は「時計の概念を覆した技術を活用して、新しいものを生み出すことができる。後から合流してきた若手も非常にモチベーション高く取り組んでいる」と話す。
ねじとしての高い機能、堅牢(けんろう)性を有しながら、悪環境に強いIoTデバイスでもある、全く新たな概念の締結部品smartNejiは、NejiLaw、カシオ計算機の技術的強みを掛け合わせることで実現するのだ。両社は、システムやアプリケーション、解析エンジンの開発に共同で取り組み、2020年中には第1段階の実験、検証を行いたいとしている。
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