CO2を原料にメタノールとパラキシレンの合成に成功:脱炭素
大阪大学 大学院基礎工学研究科、川崎重工業、三井化学は、CO2を原料としてメタノール合成およびパラキシレン合成の実証試験に成功したと発表した。
大阪大学 大学院基礎工学研究科、川崎重工業、三井化学は2025年2月20日、CO2を原料としてメタノール合成およびパラキシレン合成の実証試験に成功したと発表した。
この実証試験は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/CO2有効利用拠点における技術開発/研究拠点におけるCO2有効利用技術開発・実証事業」として採択された「カーボンリサイクルを志向した化成品選択合成技術の研究開発」において行われた。
実証試験の概要
国内では2050年をめどにカーボンニュートラル社会の実現に向けて地球温暖化対策の取り組みが進んでいる。
カーボンリサイクルを志向した化成品選択合成技術の研究開発は、工場などから排出されるCO2を有効利用するための技術開発を進めるプロジェクトだ。同プロジェクトでは、CO2と水素からメタノールを経由してパラキシレンを製造する実証試験をNEDOのカーボンリサイクル実証研究拠点(広島県大崎上島町)で行った。
実証試験を行うに当たって、メタノールの合成で使用する触媒の量産技術やパラキシレンの合成で利用する高選択制の触媒開発技術といった要素技術を確立。これらの要素技術を用いてCO2から合成したメタノールを活用し、パラキシレンを合成する技術の実証試験を実施した。
実証試験で利用した製造法は石油資源を原料とする製造法と比較してCO2排出量の削減が可能となる。
メタノールは、従来の化成品原料用途に加え、環境負荷を低減する燃料として船舶などで利用されている。パラキシレンは、高純度テレフタル酸の原料として衣服、PETボトルなどのポリエステル樹脂の製造にも使われている。従来の石油資源ではなく、直接空気回収技術(Direct Air Capture、DAC)で大気中から回収したり、工場などから排出されたCO2をメタノール、パラキシレンに変換して利用したりすることで、CO2の排出削減および固定化につながる。
今後は、カーボンリサイクルを志向した化成品選択合成技術の研究を進める他、事業化に向けての取り組みも推進する。
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