AIを活用し状態が複雑に変化する化学品製造工程の自動運転に成功:FAニュース
日本触媒とNTTコミュニケーションズは、プラントの自動運転を実現するNTTコミュニケーションズのシステム「AI Autopilot System」を活用し、これまで困難とされてきた状態が複雑に変化する化学品製造工程の自動運転に成功したと発表した。
日本触媒とNTTコミュニケーションズは2025年2月18日、プラントの自動運転を実現するNTTコミュニケーションズのシステム「AI Autopilot System」を活用し、これまで困難とされてきた状態が複雑に変化する化学品製造工程の自動運転に成功したと発表した。これにより運転員の負荷軽減と技能継承プロセスの効率化が見込まれる。
AIモデルを活用した実証実験の概要
これまでAI Autopilot Systemは状態があまり変化しない化学プラントの自動運転のみを実現できていた。両社は、連続蒸留工程の運転データと運転員の操作履歴、運転員が蓄積してきた運転ノウハウを学習させたAI(人工知能)モデルを構築。AI Autopilot Systemに学習済みAIモデルを組み込み実証実験を行い、状態が複雑に変化する連続蒸留工程の自動運転を実現した。
連続蒸留工程は温度制御が重要となる。この温度制御が正しく行われているかについて、両社は連続蒸留工程から流出する単位時間当たりの留出液量で評価した。また留出液は、連続蒸留工程から流出するだけでなく、断続的に一部再利用されるため、液面計で計測する理想的な留出液面の高さ(理想液面)は時間の経過で変化する。各時間における液面計の実測値と理想液面の誤差は手動操作時に平均2.38%だった。学習済みAIモデルをAI Autopilot Systemに組み込むことで、AIによる運転時は平均2.06%になった。この精度は、熟練運転員による手動操作時と比較すると13.5%の改善となり、手動操作と同等以上の運転品質を実現できることが分かった。
今後、日本触媒は今回の取り組みを工場内の他のプラントへ水平展開することで、運転員の負荷軽減と技能継承プロセスの最適化を通してDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進していく
NTTコミュニケーションズは、化学品を製造する際に一定量ごとに製品を生産するバッチプラントや少量多品種の生産を行うプラントなど、手動操作が残っているプラントの自動運転の実現に向け今回のシステムの機能拡張を進める。この技術を化学工場のみならず幅広い産業分野にも展開し、人手不足など顧客の課題解決に向けた取り組みも推進する。
AIモデル活用の背景
一般に、温度、圧力、濃度などの状態が絶えず変化する化学品の製造を行うプラントを運転するには、豊富な知識と経験が必要で、自動運転は困難とされている。
このたび自動運転に成功した化学品製造工程は、化学品の純度を高めるための連続蒸留工程だ。同工程では、流入する反応液の組成が、流出する留出液の再利用量や組成によって変化する他、天候などの外部影響も受けるため、熟練の運転員が高い集中力をもって常時手動で操作する必要があった。そのため、安定稼働を継続するためには技術継承が重要だ。しかし、運転員の育成には多大な時間がかかっている。
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