OKIがリコーと東芝テックの合弁会社に合流 LEDプリントヘッド技術で競争力強化:製造マネジメントニュース
リコーは東芝テックと設立した合弁会社のエトリア(ETRIA)に、新たに沖電気工業(OKI)が参画すると発表した。
リコーは2025年2月13日、東芝テックと設立した合弁会社のエトリア(ETRIA)に、新たに沖電気工業(OKI)が参画すると発表した。OKIの保有するLEDプリントヘッド技術などを用いて、新たな共通エンジンを開発し、顧客ニーズへの柔軟な対応力確保などを狙う。

画像左からOKI 代表取締役社長執行役員 兼 最高経営責任者の森孝廣氏、中央がETRIA 代表取締役 社長執行役員の中田克典氏、右がリコー 代表取締役 社長執行役員の大山晃氏 出所:リコー、OKI、ETRIA
小型で省エネな複合機開発など視野に
ETRIAはリコーと東芝テックが共同出資する形で2024年7月に組成した合弁会社。複合機メーカー各社の開発/生産体制の統合に加えて、複合機内の機構などを含む共通エンジン開発/生産を推進し、製品のスケールメリット創出などによる市場での競争力強化を目指す。さらに新商品の企画/開発や調達最適化にも取り組む。
今回、OKIはETRIAへの参画に当たり吸収分割契約を締結し、複合機などの開発や生産に関わる事業を会社分割することでETRIAに統合する。さらにOKIの連結子会社でプリンター関連商品の製造を手掛けるタイ企業のOki Data Manufacturingの株式をETRIAに承継させる。契約の効力発生日は2025年10月1日。なお事業統合に伴う「リコーの当期連結業績への影響は軽微」(リコーのニュースリリースより)だとしている。
事業統合に当たってETRIAに参画する各社の出資比率が変動する。これまでETRIAへの出資比率はリコーが85%、東芝テックが15%だったが、OKI参画後はリコーが80.4%、東芝テックが14.25%、OKIが5.01%になる。これによりETRIAは東芝テックの持分法適用会社から外れる。
リコー 代表取締役 社長執行役員の大山晃氏は、OKIの参画がもたらす効果の1つとして、「OKIのLEDプリントヘッド技術によって、より競争力のある共通エンジンの開発ができると考えている」と説明した。LEDプリントヘッド技術は、多数配列したLEDを光源として感光体に画像を書き込むもので、業務用途における電子写真方式の印刷などで活用されている。
OKI 代表取締役社長執行役員 兼 最高経営責任者の森孝廣氏は「LEDプリントヘッド技術を用いた機構は、可動部分も部品点数も少なく、シンプルな構造になりやすい点が特徴だ。設計の自由度が高く、製品の小型化がしやすい点で大きな優位性がある。当社としては、技術に加えて耐久性の高さやユーザーによるメンテナンスの容易さなどでも製品の差別化を図ってきた」と説明する。
また、ETRIA 代表取締役 社長執行役員の中田克典氏は「ETRIAが保有する業界トップレベルの高速高解像対応のレーザー技術に加えて、製品の小型化や省エネ化につながるLEDプリントヘッド技術を搭載したエンジンを持つことで、変化し続ける顧客ニーズに応えやすくなる。実は本来、この2つの技術をどちらも内製化するのは非常に難しいことだ」と語った。
具体的に技術をどう製品に生かすかを問われた大山氏は、あくまでたとえ話であるとして上で「環境性能を重視するユーザーが出先などで使いやすい、小型かつ省エネ、省スペースな複合機の開発に生かせる可能性がある」と答えた。
こうした技術力、製品開発力の強化に加えて、ETRIAとしては、Oki Data Manufacturingを生産拠点として活用することによるサプライチェーンの強靭化も見込める。
一方、OKIはETRIAへの参画で、現状の事業基盤を超えた範囲で高付加価値の製品を開発し、商品ラインアップの強化を図れる。「近年、当社の複合機分野の製品ラインアップの点数はどんどん減って弱くなっていっている。今回の枠組みの中で再強化して、販売に力を入れられるようにしたい」(森氏)。また、今回の取り組みをきっかけとしたリコーや東芝テックとのETRIAに関わる事業以外での共創活動が進展することへの期待感にも言及した。
森氏は「今回のアライアンスは私自身が心から望んでいたもので、当社とETRIAにとって完全なWin-Winの関係だ。企業カルチャーや人材に関しても全く心配していない。本当にベストパートナーだと心から思っている」と語った。
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