DMG森精機は2025年2月5日、2024年12月期(2024年1〜12月)の決算に関する説明会をオンラインで開催した。
保守関連の売り上げや平均単価など上昇も、2025年12月期は減収減益見込み
2024年12月期の売り上げは前年度比0.3%増の5409億円、営業利益は同21.0%減の437億円、受注額は同4.6%減の4960億円だった。また、欧州で進めているSAP S4/HANAの導入費用が膨らんだ他、コロナ禍に仕入れて不要になった電子部品などを処分する費用も計上した。受注残は2180億円となり、前年同期の2470億円より減少した。
DMG森精機 代表取締役社長の森雅彦氏は「ドイツの輸出管理が厳格化し、日本より厳しくなった。それによって中国の顧客から数十億円分のキャンセルが出た。また、また、トランプ政権への移行後に関税がかかるとの見通しから予想以上にカナダとメキシコで投資が止まってしまった。顧客の意思決定が遅れていて、見積もり件数が高止まりしている」と語った。
2024年12月期の受注の平均単価は、同社が掲げる自動化や工程集約を含めたMX(マシニングトランスフォーメーション)が浸透し、前年度比約15%増の7100万円だった。保守部品の販売やメンテナンス/リペア/オーバーホール、エンジニアリングの受注額は同7.4%増の1242億円となり、受注全体の25%を占めるまでになった。
「5年より10年、20年と使える機械の方が結果的にコストは安くなる。その時に誰が機械のメンテナンス、ソフトウェアのアップデート、ワークのつかみ方や工具の選定、加工のプログラミングをサポートするのかが重要であり、今、ユーザー側が人手不足でこれらについてわれわれを頼ってきている」(森氏)
2025年12月期の業績は前年度比5.7%減の売上高5100億円、営業利益は同13.1%減の380億円、受注額は5300億円と見通している。2023〜2025年までの「中期経営計画2025」で掲げた2025年の売上高6000億円、営業利益720億円などの目標は取り下げた。
資本的な独立性や技術的な守秘義務の徹底が重要
説明会では工作機械メーカーの独立性にも言及した。
「例えば、航空機のエンジン部品なら、機械を提供するわれわれのエンジニアと機械を導入するユーザーのエンジニアが一緒になって部品を作り上げていく。自動車、医療、半導体なども同様だ。10年、20年前は自動車系、重工系、鉄鋼系などの工作機械メーカーがたくさんあったが、今は独立系の工作機械メーカーに引き合いが集中している。株主のサポートや経営者の強いコミットメントによって、資本的な独立性、技術的な守秘義務の徹底を保つことが重要だ」(森氏)
DMG森精機自体、DMG(ギルデマイスター)や日立精機をはじめ、数々の企業買収や事業継承などを経て、グループを拡大してきた。
「本当のステークホルダーはその工作機械を使っている人たちだ。われわれはユーザーから見て価値があり、互いに補完し合うことができ、よりいいサービスを提供できるようになるM&Aを行ってきた。2つの会社が一緒になってシナジーを出すためには、部品表や3D CAD、PLM、MES(生産実行システム)、ERP、さらには人材のマネジメントや給与体系などを行う人事関係のソフトウェアの統合もしなければならない。欧州や米国などの安全指令に対する対応も必要だ。全世界のエンジニアに対して互いの機械に関する教育も要る。主軸の軸受1つとっても、どこの製品にするのかなどやることが膨大にあり、それらに経営者が関与しないといつまでたっても決まらない。片手間にはできない」(森氏)
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