牧野フライス製作所へのTOB、ニデック首脳陣は何を語ったか:工作機械(2/2 ページ)
ニデックは記者会見を開き、牧野フライス製作所へのTOB(株式公開買い付け)に関して説明した。本稿では、手法ではなくシナジーについて焦点を当てて紹介する。
今後の拡張は「牧野フライス製作所と相談」
ニデックには工作機械のユーザーとしての側面もある。
西本氏は「ニデックそのものが、大量の工作機械を使う。われわれが試験台、ショールームとなって顧客に販売していける。これは牧野フライス製作所にとっても大きなメリットになる。われわれは減速機を製造しているが、以前は必要なタイミングでいい工作機械が手に入らなかった。景況がいい時にはなかなか作ってもらえなかった。それが三菱重工工作機械の買収後は劇的に改善された。われわれのロボット用の小型減速機はもともと市場シェア0%だったが、世界シェア25%まで伸びた。これを後押ししたのが三菱重工工作機械の歯車機械だ。プレス機もPAMA、三菱重工工作機械の買収後は精度が劇的に向上した」と語れば、ニデック 代表取締役社長 CEOの岸田光哉氏も「(牧野フライス製作所がグループ入りすれば)工作機械の使用者として精度が高まり、できる事業の範囲が拡大する。本当にワクワクしている」とコメントした。
今後のさらなる成長に向けた、工作機械に関するM&Aについて西本氏は「旋盤に関しては考えていない。マシニングセンタについては牧野フライス製作所と相談しながら進めたい。例えば牧野フライス製作所の欧州における売り上げは約8%で牧野フライス製作所が『まだまだ自分たちで増やせる』とおっしゃるなら一緒になって増やしていく。そうではない場合、候補は幾つかある。実際に欧州の企業から連絡も私の元に来ている。ただし、われわれだけで決めるつもりはない」と述べた。
「あらゆる手段で誠意を持って尽くす」
岸田氏は今回のTOBに関して「これまでのニデックのM&Aはどちらかといえば経営的に困っている状況から立て直すという側面が強かった。ただ、今は適切な経営をされている企業と一緒になっていくことで、さらなる企業価値の創造を目指したいという方向に舵を切っている。われわれ自身の事業の成長のみならず、業界として世界に絶対に負けない、もう一段上のフェーズを目指していくという意味でも、今回のTOBが互いにとって意味があるものを目指しているということを申し上げたい」と話した。仮に経営陣の賛同が得られなかったり、別の企業から対抗的な提案が出てきたりした場合には「あらゆる手段をもって理解をいただけるように誠意を尽くしていきたい」と答えた。
今回、牧野フライス製作所に対して事前の協議を行わなかった点について、M&Aなどの実務を担当するニデック 専務執行役員の荒木隆光氏は「水面下で提案するとそこで受諾いただけるかどうか分からない。最終的に合意いただけるとしても非常に年月を要することが多いため、最初からこういう形でご提案させていただいた」と語った。
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