自動車産業が2035年に目指す姿や危機感をまとめたビジョンを発表:脱炭素(4/4 ページ)
日本自動車工業会は自動車産業からモビリティ産業への変革に向けて目指す姿をまとめた「自工会ビジョン2035」を発表した。
2035年に目指す姿
2035年に向けて、デジタルトランスフォーメーション(DX)とグリーントランスフォーメーション(GX)の両面において、政府や自動車以外の産業、スタートアップ、若い世代との共創を推進する。「自動車がモビリティへと進化し、人々の生活に豊かさと、共創/体験のワクワク感を与える存在へ。地球環境や地域社会の持続性と日本の産業競争力の維持、発展に寄与する」と2035年の姿を設定した。
GXに関しては、多様なモビリティやパワートレインを開発、提供し続けること、充電/充填インフラの充実、重要部品の仕様共通化など自動車メーカー間の協調領域拡大、クリーンエネルギーの供給基盤構築に向けた他産業への働きかけなどが取り組みの中心になる。
モビリティを支えるインフラの整備としては、手ごろな価格のクリーンエネルギーとそれを使うモビリティの普及による電動車を誰でもストレスなく保有できる社会の実現、ガソリンスタンドのような既存のエネルギーインフラの活用とクリーンエネルギー市場創生の両立、電池の2次利用やV2Xによるエネルギーマネジメントへの貢献などを目指す。
サプライチェーン強靭化と循環型社会の実現に向けては、安定的に半導体を確保しながら基幹部品や車両を生産すること、電動車のバッテリーリサイクルにより資源需要の一部をカバーすること、リサイクルできるバッテリーの海外流出を最小限に抑制すること、サプライヤー全体で足並みをそろえて電動化に向けて事業形態を変革することなどを目指す。また、再利用可能な資源の循環型システムの確立により、循環資源の効率的な利用を進める。
DXでは、サービス向け自動運転車両の提供やインフラ協調型システムの開発、多様な車両のSDV化、ビークルAPIやビークルOSなどシステムの標準化や共通化の模索、デジタルインフラの整備やデータ連携の促進などが主な取り組みだ。持続可能な地域づくりに不可欠な交通/物流インフラの維持のため、自動運転技術が交通/物流インフラの一部を構成し、人や物の移動を継続できるようにする。また、自動運転システムによる交通安全への貢献も目指す。リアルタイムな車両データを活用したモビリティサービスの品質向上にも取り組む。
ユーザー体験の進化や体験価値の向上に加えて、経済の活性化への貢献も目指していく。SDVによる新たな体験、アップデートによる価値向上やパーソナライゼーションが普及する。
こうした姿の実現に向けて、政府には法整備やインセンティブによるサポート、グローバルな通商政策、標準化などでの支援を呼びかけていく。
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