川越市の全道路の1.6%に走行中無線給電システムがあればEVの無限走行が可能に:電動化
東京大学生産技術研究所がEVの「無限走行」を可能にする走行中ワイヤレス給電システム(DWPT)の最適配置に関する数理最適化とシミュレーションの結果を発表。埼玉県川越市を題材とした場合、全道路の約1.6%にDWPTを敷設することで市内の全車両(EV)が無限に走行し続けられるという結果が得られたという。
東京大学生産技術研究所は2025年1月6日、EV(電気自動車)の「無限走行」を可能にする走行中ワイヤレス給電システム(DWPT:Dynamic Wireless Power Transfer)の最適配置に関する数理最適化とシミュレーションの結果を発表した。埼玉県川越市を題材とした場合、同市の全道路約150kmの約1.6%に当たる2359mにDWPTを敷設することで、市内の全車両(EV)が無限に走行し続けられるという結果が得られたという。
同研究所 准教授の本間裕大氏の研究チームは、走行中にDWPTから給電するだけでEVが自由に航続し続けられる「無限走行」という究極のシナリオを想定し、市街地におけるDWPTの必要な敷設量とその最適配置を導出する数理モデルを提案している。この数理モデルを川越市に適用した場合、同市の約150kmの全道路を7mセグメントに分割し、2万1000以上の0-1変数から成る大規模離散最適化問題を解くことになる。パターン総数は1.45×10749に上るという。これに信号パターンや待ち行列の変動も反映した詳細な交通シミュレーションを組み合わせた結果、市内の総道路長14万7686mの約1.6%に当たる2359mにDWPTを敷設することでEVの無限走行が可能になることが分かった。なお、1カ所当たりのDWPT敷設長は14.77mとなっている。
また、市街地におけるDWPTは、車両が信号によって停止したり減速したりする交差点付近に敷設することが最も効果的であることが示されると同時に、その具体的な箇所や敷設長については、緻密な配置戦略が求められることが明らかになった。これは、EVへの給電効率が、交通量や信号パターンに伴う加減速に大きく影響を受けるためだ。交通量や一時停止時間、待ち行列長と敷設コストなどさまざまなトレードオフ構造を勘案しながら、最適な配置戦略を導き出すことが重要になるとしている。
研究チームは、DWPTの導入によるEVの無限走行が低炭素社会の実現に向けた重要な鍵になるととともに、将来的な自動運転社会との親和性を期待できると想定している。なお、今回の研究成果は、米国ワシントンDCで2025年1月5〜9日に開催される交通系国際会議「TRB(Transportation Research Board) 2025 Annual Meeting」に採択された。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 合計50kmの無線給電でEVの95%以上の移動をカバーできることを検証
東京大学 生産技術研究所は高速道路上の走行中ワイヤレス給電の最適配置に関する検証結果を発表した。 - EVの電池容量は10kWhでも足りる? 走行中無線給電の公道実証を開始
東京大学大学院 新領域創成科学研究科の藤本・清水研究室は走行中の電動車に無線給電を行う実証実験を開始する。 - 600W出力でポケットサイズのワイヤレス給電システム、走行中給電にも対応
ミラクシア エッジテクノロジーは、「EdgeTech+ 2024」において、開発中の小型ワイヤレス給電システムを披露した。600W出力のシステムで「業界最小、最軽量、ポケットサイズ」をうたう。また、受電ユニットを変更することで走行中給電にも対応する。 - EVワイヤレス給電協議会が設立、関西電力、ダイヘン、シナネンらが発起人に
関西電力、ダイヘン、シナネン、三菱総合研究所、米国WiTricity Corporationの5社は、電気自動車の普及を支える社会インフラとして、ワイヤレス給電を実用化し普及させていくため「EVワイヤレス給電協議会」を設立すると発表した。 - 宇宙での走行を実現するオール金属タイヤ、接地体はらくだの肉球をヒントに開発
ブリヂストンは「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」で開発を進める月面調査用タイヤのプロトタイプや給電タイヤを披露した。 - EVの無線給電に再び注目集まる、ステランティスが走行中に充電できるテストコース
ステランティスは2021年12月2日、走行中のEV(電気自動車)への無線給電が可能なテストコース「Arena del Futuro(Arena of the Future)」が完成したと発表した。