合計50kmの無線給電でEVの95%以上の移動をカバーできることを検証:電動化
東京大学 生産技術研究所は高速道路上の走行中ワイヤレス給電の最適配置に関する検証結果を発表した。
東京大学 生産技術研究所は2024年2月8日、高速道路上の走行中ワイヤレス給電の最適配置に関する検証結果を発表した。片道に合計50km分のワイヤレス給電区間を設けることで、95%以上の移動をカバーできることが分かったという。再生可能エネルギーの有効活用にも貢献できる可能性も示した。
検証では、総延長約500kmの新東名・名神高速道路(東京 大阪間)と、総延長約1350kmの東北自動車道(東京 青森間)の地理情報と、どの地点に給電コイルを設置するかを最適化する数理最適化手法を用いた。いずれの高速道路でも、片道に合計50km分のワイヤレス給電区間を敷設することでバッテリー容量40kWhのEV(電気自動車)による移動の95%をカバーできるという。EVの普及率が30%程度になれば採算性も見込める。
走行中ワイヤレス給電は、車体の重量増につながるバッテリーの搭載量を抑制しながら、給電コイルの上を通過する度に小まめに充電することで十分な走行距離を実現し、充電ステーションでの充電の待ち時間を短縮すると期待されている。ただ、ワイヤレス給電のコイルの設置工事やメンテナンスでコスト負担が重くなるため、広範囲かつ長距離にわたって敷設するのではなく、最適な配置で要所要所に整備することが社会実装の鍵を握る。
最適配置には複数のパターンがあり、異なる設置箇所でも同等の社会的性能を実現できるという。日中に多くのEVが走行する地点にワイヤレス給電のコイルを設置すれば、太陽光発電で余剰となっている電力を振り向けることができる。また、風力発電が設置されている地域にコイルを配置することで、再生可能エネルギーの地産地消につなげることもできるとしている。
走行中ワイヤレス給電でEVの大半の移動をカバーできれば、充電ステーションはごくわずかな超長距離移動の充電を補完するだけでよく、充電ステーションの設置台数の最適化も図れると見込む。今後は高速道路だけでなく市街地の移動も含めて日本全国の道路網全体でさらなる検証を行う。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- EVの電池容量は10kWhでも足りる? 走行中無線給電の公道実証を開始
東京大学大学院 新領域創成科学研究科の藤本・清水研究室は走行中の電動車に無線給電を行う実証実験を開始する。 - ホンダがEVをゼロベースで作る、「既存のスペック競争には参加せず」
ホンダはEVのグローバルモデル「0シリーズ」を発表した。 - 軽商用EVのミニキャブミーブを大幅改良、走行距離35%増の180kmに
三菱自動車は軽商用EV「ミニキャブミーブ」を大幅改良し「ミニキャブEV」として12月21日から販売する。 - 走行距離たった50kmの小型電動バスを路線バスとして走らせる方法
早稲田大学は、磁界共鳴方式のワイヤレス給電に対応した小型電動バス「WEB-3 Advanced」を東芝らと開発し、羽田空港周辺や川崎市内で公道実証実験を開始したと発表した。ワイヤレス給電の普及を目指し、利便性を検証するのが目的だ。2017年3月ごろまで両地域で実証実験を継続する。 - ワイヤレス給電インホイールモーターは、大容量バッテリーよりも「トータルコストが安い」
東京大学とブリヂストン、日本精工(NSK)、ローム、東洋電機製造は2019年10月10日、千葉県柏市で説明会を開き、走行中のワイヤレス給電が可能なインホイールモーターの第3世代品を開発したと発表した。 - インホイールモーターの走行中ワイヤレス給電に成功、車載電池からも電力を供給
日本精工(NSK)は、東京大学や東洋電機製造と共同で、送電コイルを設置した道路からインホイールモーターに無線で給電して走行することに成功した。この取り組みが成功するのは「世界初」(NSK、東京大学、東洋電機製造)としている。 - 日立グループがEV向けインホイールモーター、小型軽量化でパワー密度2.5kW/kg達成
日立製作所と日立Astemo(アステモ)は2021年9月30日、ホイール内部にモーターとインバーター、ブレーキを収めたダイレクト駆動システム「Direct Electrified Wheel」を開発したと発表した。日立グループの鉄道やエレベーターなどモビリティ分野における技術開発や製品化の実績を生かし、小型軽量化を図った。