インホイールモーターの走行中ワイヤレス給電に成功、車載電池からも電力を供給:電気自動車
日本精工(NSK)は、東京大学や東洋電機製造と共同で、送電コイルを設置した道路からインホイールモーターに無線で給電して走行することに成功した。この取り組みが成功するのは「世界初」(NSK、東京大学、東洋電機製造)としている。
日本精工(NSK)は2017年4月5日、東京大学や東洋電機製造と共同で、送電コイルを設置した道路からインホイールモーターに無線で給電して走行することに成功したと発表した。この取り組みが成功するのは「世界初」(NSK、東京大学、東洋電機製造)としている。
自動車がインホイールモーターで走行するには、駆動用バッテリーからハーネスで電力を供給する必要があった。3者は既に駆動用バッテリーからインホイールモーターへのワイヤレス給電に成功しており、有線のデメリットを克服した。
今回は道路からインホイールモーターへの給電を実現した。インホイールモーターに駆動用バッテリーと道路の両方から電力を供給することにより、電気自動車の課題である走行距離の短さを解決できるとしている。
これまでの研究は「駆動用バッテリーとモーターをワイヤレスでつなぐこと」
インホイールモーターは、タイヤホイールの内部に駆動用モーターを配置するもので、駆動力の制御の自由度向上や、動力伝達部品の点数削減による軽量化、居住空間の拡大などのメリットがあるとされている。
しかし、タイヤホイール内の駆動用モーターに電力を供給するにはハーネスが必要で、配線が煩雑になるとともに、屈曲や断線の恐れがあるため十分な耐久性を確保するのが難しく、実用化には至っていなかった。NSKと東洋電機製造、東京大学大学院 新領域創造科学研究科の研究グループは、インホイールモーターをワイヤレスで駆動する研究を進めてきた。
3者は2015年に、磁界共振結合方式のコイルを車体とインホイールモーターに搭載し、駆動用バッテリーから無線でインホイールモーターに電力を供給して走行することに成功した。この時点で次の研究テーマとして、インホイールモーターへの走行中の電力供給と、インホイールモーターの高出力化を挙げていた。
走りながらインホイールモーターに給電
今回の発表は、インホイールモーターに駆動用バッテリーからだけでなく、送電コイルを設置した道路からも電力を供給できるようにしたもの。走行中は道路側の送電コイルと車両の受電コイルの位置が一致しにくいため、位置ずれに強い磁界共振結合方式を採用した。
受電コイルは車体ではなくインホイールモーターに装着し、送電コイルまでの距離を短くしている。車体に受電コイルを装着する場合、路面の凹凸や乗車人数によって車体が上下してしまう。車体が沈み込むときのことを考慮すると、通常時は受電コイルと送電コイルの距離が離れてしまうという課題があった。インホイールモーターに受電コイルを装着することで、この課題を克服した。
インホイールモーターのエネルギー回生を効率化するため、リチウムイオンキャパシタを採用した。リチウムイオンキャパシタは大電力を扱うことができ、充放電の繰り返しに強い。回生したエネルギーを駆動用バッテリーに充電せず、リチウムイオンキャパシタに蓄電することで駆動用バッテリーの容量を減らす狙いがある。
インバーターにSiC(シリコンカーバイド)パワー半導体を採用し、インホイールモーターの出力は1輪あたり3.3kWから12kWに向上させた。実験車両は左右の前輪にインホイールモーターを装着した前輪駆動だったが、4輪全てに装着すると出力が48kWとなり、ベース車両である三菱自動車の電気自動車「i-MiEV」と同等の出力を確保できるとしている。
また、ハブ軸受けユニットはモーターとホイールの回転軸をずらした構造のオフセット軸減速機を内蔵して小型化し、スペースに制約がある中でもステアリング機構と共存できるようにした。
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