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生産設備の非固定化は製造現場に何をもたらすのか 導入事例から振り返るMONOist 2025年展望(2/2 ページ)

ワークの搬送にとどまらないAGVやAMRの活用事例が増えている。幾つかの導入現場を紹介しながら、その効果について考える。

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AMR活用でリードタイムが8分の1に シチズンマシナリー

 シチズンマシナリーでも2023年に完成した精密加工工場に2台のWH-MAR10を導入した。工作機械に搭載するスピンドルのレーザーマーカーによる刻印やセンター研磨、ねじ研削、内外径の粗加工、仕上げ加工などの工程間のワークハンドリングを行っている。

 従来はそれらを手作業で行っており、20個または30個といったワークの加工が全て終わらないと次の工程に進めなかった。設備単位で見れば段取り回数が減り、生産効率は高い一方、製品単位で見ると全体のリードタイムが長くなってしまうという課題があった。そこで、新しい工場では全行程を1個流しにし、リードタイムを8分の1に縮めることに挑戦した。

 ロボットはストッカーから1個ずつワークを取り出し、まずレーザーマーカー加工機に投入。刻印が終わると取り出して次の工程の加工機へと投入していく。以前は作業者が耐熱手袋をして行っていた、数百度に熱せられたローターのスピンドルへの焼きばめも、WH-MAR10で行っている。


ワークハンドリングを行うWH-MAR10[クリックで拡大]

無人化したラインは女性社員1人で担当しているという[クリックで拡大]

協働ロボットとAMRを分離したモビリティシステム 山善

 山善のトータル・ファクトリーソリューション支社が同社グループ会社の東邦工業と共同で開発したのは、ロボット用最新モビリティシステム「ROBO-COTATZ(Corporated Technical Aid of TOHO and YAMAZEN、ロボこたつ)」だ。

 協働ロボットとAMRが分離しており、AMRが協働ロボットを作業場所まで運んだ後は、AMRとして搬送業務を担うことができる。1台のAMRで複数の協働ロボットを担当することも可能だ。一体型と違い、万が一、協働ロボットまたはAMRが故障した際に、どちらも使えなくなるというリスクもなくなる。AMRまたはAGVがロボットを運び、また別の作業に従事するというシステムは、より柔軟性を増したモノづくり環境を作るためのアイデアの1つになるだろう。


ロボット用最新モビリティシステム「ROBO-COTATZ」[クリックで拡大]出所:山善

無線通信技術の導入に向けたガイドライン策定 NEDO

 AGVなどの移動ロボットの遠隔制御には無線通信が欠かせない。その点では、新エネルギー・産業技術総合開発機構では、「製造現場における無線通信技術の導入ガイドライン」を2024年に発表しており、中小規模工場や大規模工場といった具体的なユースケースに応じて、無線通信技術の導入から運用までに検討すべき事項を解説している。

 ガイドライン策定の背景には、製造現場で5Gなどの無線通信技術の活用を通じて、柔軟かつ迅速な組み換えや制御が可能な生産ラインなどの構築や、IT/OTのシームレスなデータ連携によるサイバーフィジカルシステムの構築によって、工場の自律的かつ全体最適な稼働を可能とし、不測の事態においても柔軟、迅速に対応できる「企業変革力」(ダイナミック・ケイパビリティ)の強化を目指すとある。


 市場環境の変化に迅速に対応する、柔軟性を持った製造現場の実現に向けたさまざまな製品、指針に加え、実際の導入事例も各所で生まれている。もちろん、企業規模や生産品目、現場の状況などによって最適解は異なるが、柔軟性をもたらす生産設備の非固定化にも注目しながら2025年も各地の製造現場の取材に臨みたい。

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