高い表面絶縁抵抗を持つステンレス鋼を開発 スマホや電池に利用可能:材料技術
日本金属は高い表面絶縁抵抗を有するステンレス鋼「FI(Fine Insulation)仕上」を開発した。
日本金属は2025年1月8日、高い表面絶縁抵抗を有するステンレス鋼「FI(Fine Insulation)仕上」を開発したと発表した。
FI仕上の特徴
FI仕上は、高い表面絶縁抵抗(50MΩ以上)の皮膜を備えている他、皮膜耐熱温度が高く、高温(〜850℃)でも安定した皮膜を維持できる。被膜は硬質な無機被膜のため、耐傷付き性にも優れており、摺動部での利用に適している。被膜の厚さは0.5μ〜1μmとなっており、ステンレス鋼以外の金属への適用も検討できる。
対応鋼種はSUS304、SUS301、SUS430などで、厚みは0.05〜0.15mmに応じ、幅は最大500mmとなる。
FI仕上の開発背景
近年、スマートフォンやゲーム機などの電子機器では小型化や低背化がトレンドになっている。これまでは導通部に触れる箇所へ絶縁テープや樹脂との複合体を設けることにより、短絡を回避する対策が取られてきたが、コスト高や小型化、低背化の妨げとなっていた。
これらの課題を背景に、日本金属はステンレス表面に絶縁抵抗を有する無機皮膜(膜厚1μm程度)をプレコートしたFI仕上を独自開発した。FI仕上は後加工で表面処理を実施する必要がないため、省スペース化にも対応した製品で、顧客の工程省略や生産性向上、コスト低減などにも貢献する。
同製品は同社の第11次経営計画「NIPPON KINZOKU 2030」のビジョンに沿い、「Near Net performance(最終製品に要求される性能を素材で実現する製品)」をキーワードに、新たなニーズに対応した独自製品で、電子機器や二次電池用途での今後の販売拡大を目指す。
また、FI仕上は、顧客での絶縁処理の必要がなくなることから環境負荷低減が可能となるため、同社独自の基準で認定する環境配慮製品「エコプロダクツ」でもある。同社は2050年にCO2排出量のNet Zeroを目標としており、エコプロダクツの拡販を通じてカーボンニュートラルの実現に貢献していく考えだ。
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