住友電工が自動車の電動化に対応する非磁性/高強度ステンレス材を開発:オートモーティブワールド2024
住友電気工業は、「オートモーティブワールド2024」で、開発中の「新・非磁性/高強度ステンレス材」と「熱マネジメント向け金属多孔体」をコンセプト展示した。
住友電気工業(住友電工)は、「オートモーティブワールド2024」(2024年1月24〜26日、東京ビッグサイト)の「第15回 EV・HV・FCV技術展」に出展し、開発中の「新・非磁性/高強度ステンレス材」と「熱マネジメント向け金属多孔体」をコンセプト展示した。
自動車の電動化で変わるニーズに対応するため非磁性のステンレス材を開発
同社は、金属の粉末を金型に入れて圧縮して固め、高温で焼結して精度の高い部品を製造する粉末冶金に関して高い技術を持つ。鉄をメインの材料に粉末冶金で、自動車のトランスミッションやエンジンの周辺にある部品の製造を行っている。
一方、近年は、国内外で自動車の電動化や電気自動車(EV)の開発に関する取り組みが活発化している。これらの動きに併せて電動化が進むエンジンの周辺部品では非磁性の材料が求められるようになると同社は考え、磁性体である鉄では対応できないそのニーズに応じるため新・非磁性/高強度ステンレス材の開発を進めている。
新・非磁性/高強度ステンレス材は、従来のステンレス材より強度や耐食性で優れており、粉末冶金による密度の調整で軽量化も図れる。住友電工の説明員は「同素材の完成後には、電動化が進む自動車エンジン周辺の部品だけでなく、非磁性が求められる産業機械の部品にも活用していく見通しだ。鉄より耐食性に優れるため海中で利用する機械の素材としても展開できると見込んでいる」と話す。用途としては、モーターエンドプレートや電動マリンビークル用部品、ウォータポンプ部品、家庭用ディスポーザー破壊機を想定している。
既に、同素材の試作品を用いて、モーターエンドプレートやディスポーザー用ハンマー、オイルポンププロータの加工品とカムリングの焼結品が試作されている。「構想段階だが、開発中の同素材は第1世代と考えており、完成後には過酷な環境に対応するタイプの第2世代を開発する予定だ」(住友電工の説明員)。
熱マネジメント向け金属多孔体は、粉末冶金を用いた独自開発の多孔構造により吸温性能を高められる技術だ。材質としては、アルミ、銅、ステンレス、モリブデンなどに対応する。用途としては熱交換器や熱クッション材が想定されている。
同社の調べによれば、熱マネジメント向け金属多孔体を採用した熱交換器は、ピンフィン型熱交換器と比べ、粉末冶金により緻密部と隙間がある部分をシームレスに接合でき熱交換面積が増やせるため熱抵抗が25%改善することが分かっている。
加えて、蓄熱材を含侵した金属多孔体は熱クッション材として機能し、発熱部材の昇温抑制に貢献する。住友電工の説明員は「2026年までには熱マネジメント向け金属多孔体を製品化したいと考えている」と語った。
なお、同社は、開発中の同技術を用いて作成したアルミ、銅、ステンレスの金属多孔体の試作品を会場で披露した。
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