業務に忙殺されデジタル人材が育たない DX意識調査で見えた日本の課題:製造マネジメントニュース(3/3 ページ)
PwCコンサルティングは、2024年版の「DX意識調査−ITモダナイゼーション編−」の調査結果に関する説明会を東京都内とオンラインで開催した。
DXを加速させる組織体制づくりを
PwCコンサルティングは調査結果を基に、企業のDXを加速させるための提言を4つ作成した。
1つ目は機能別組織からサービス志向型組織への移行である。顧客ニーズが多様化し、市場変化が激しい中では、社内の意思決定に要するスピードをより一層向上することが求められる。これを背景にPwCコンサルティング ディレクター Agile & Cloud Transformation CoEリードの鈴木直氏は「従来の機能別組織ではなく、企業が展開するサービスごとにサービスオーナーや企画/業務/アプリ開発/インフラ/運用メンバーからなるチームを組織するなどの工夫が求められている」と説明する。サービス提供の前線にデジタル技術とデジタル人材を直接配置することで、部門をまたいだコミュニケーションコストの削減が見込める。
2つ目はデジタル人材を支援するための「デジタルプラットフォーム」の整備だ。事業の前線で活躍することになるデジタル人材に対して、セキュリティインシデントやコスト増加、開発生産性の低下といった事象の発生を防止する仕組みをIT部門から提供する。
3つ目はアジャイル開発の適用範囲の積極的な拡大である。調査において、DXの効果が期待通り、あるいは期待以上と回答した企業でのアジャイル開発の実践度合いが高かったことを挙げて、鈴木氏は「取り組みの初期段階で明確なゴールを示すことが難しいDXにおいて、アジャイル開発が有効であることを示唆するものだ」と説明した。
また、アジャイル開発導入時の課題に関する質問への回答を経年比較してみると、2024年は2023年と比較して「プロジェクトにメンバーを専任でアサインできない」など、アジャイル開発を導入する際に直面しやすい実践的な課題が上位に挙がる傾向があった。この結果は各社でアジャイル開発の適用が進んでいることを示すものだと読み取れる。
この上で鈴木氏は「アジャイル開発の考え方をソフトウェア開発だけでなく、企業内のあらゆる業務や組織運営にも適応して、企業全体で市場変化に柔軟に対応していくべきだ」と指摘した。短サイクルで振り返りと改善と繰り返していくアクティビティーを、企業全体に適用していくことが求められる。
4つ目はDXをけん引する人材の育成と企業全体のデジタルリテラシーの向上だ。調査では、デジタル人材育成に関して期待通り、期待以上の効果が出ているとした企業は、全体では13%程度にとどまる。鈴木氏は「DX推進部門などが主体となって具体的な人材要件を定義し、役割ごとの育成計画や採用計画を立てていくことが重要だ」と説明した。育成した人材の退職を防ぐため、キャリアパスやキャリアアップの機会を提供することも大事になる。
デジタルリテラシーの向上については、人事部門や教育担当部門が中心となって、オンラインを含めた研修プログラムを整備していく必要があるとした。
鈴木氏は「DXを成功に導く上では、『やることを変える』と『やり方を変える』の2つの視点が大事だ。特に『やり方を変える』のは重要で、この部分をしっかりと考え、遂行していく必要がある」と説明した。
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