業務に忙殺されデジタル人材が育たない DX意識調査で見えた日本の課題:製造マネジメントニュース(2/3 ページ)
PwCコンサルティングは、2024年版の「DX意識調査−ITモダナイゼーション編−」の調査結果に関する説明会を東京都内とオンラインで開催した。
開発の内製化が育成度合いに影響を与えている可能性も
デジタル人材育成における社内の障壁について尋ねたところ、最も多かった回答は「対象となる社員が日々の業務に追われて、育成に時間が割けない」となった。座学と実践のいずれについても、デジタル人材育成の対象者が必要な時間を捻出できていない可能性がある。またシステム開発/運用における社内の障壁を聞いた質問でも、「日々の業務に追われて自動化に取り組む工数が捻出できない」とする回答が上位に挙がった。
要因として中山氏は、担当者が複数の会議に出席する必要があり、その影響で業務時間が圧迫されていることも多いなどの問題を指摘した。非効率的な業務領域の改革などを通じ、社員がスキル向上や業務自動化に取り組める時間をいかに創出するかが課題になる。
DXの取り組み成果について尋ねた質問では、ITモダナイゼーション成熟度によって回答結果に違いが見られた。「期待通り、もしくは期待以上」と回答した企業は、「先進」は96%、「準先進」は51%、その他は「19%」だった。社内のデジタル人材育成の状況に関する質問でも同様の傾向が見られた。「期待通り、もしくは期待以上」とした企業は、「先進」が80%、「準先進」が10%、「その他」が2%だった。
中山氏はこうした結果の背景について、システム開発全般やアジャイル開発における内製化の程度が影響している可能性を指摘した。ここでの内製化とは、システム開発においては企画や開発、運用全てについて、アジャイル開発ではスクラムマスターやプロダクトオーナー、開発者などの役割について、自社の社員が全て担当している状況を指す。
「先進」の企業は、他の企業に比べて内製化が高い傾向にある。こうした企業では習得したスキルの実践機会を多く与えられ、社員が経験を積みやすく育成が進むと考えられる。
この他、「先進」ではDX推進チームと業務部門、IT部門が連携してDXに取り組む傾向が強く、システム開発や運用における自動化の程度も高い様子がうかがえた。
中山氏は調査結果を総括して「『先進』の企業ではシステム自動化を推進することで作業を効率化し、人材育成に多くの時間を割けるようになる。人材が育てば、さらに最新の技術を作った新しい自動化を推進できる。また、アジャイル開発はクロスファンクショナルなチームでの取り組みが求められる。アジャイル開発の推進は組織を超えた連携を活性化し、さらに社員の育成機会を生む。それぞれの取り組みがお互いに好影響を与えながら、DX成功に向けた好循環を形成しているようだ」と説明した。
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