TRONプログラミングコンテストの入賞作品を発表、第2回の開催も決定:組み込み開発ニュース
トロンフォーラムは、東京都内で開催された「2024 TRON Symposium-TRONSHOW-」において、国内外の大手マイコンメーカー4社が協賛する「TRONプログラミングコンテスト」の入賞作品を発表するとともに表彰式を行った。
トロンフォーラムは2024年12月12日、東京都内で開催された「2024 TRON Symposium-TRONSHOW-」(同月11〜13日)において、国内外の大手マイコンメーカー4社が協賛する「TRONプログラミングコンテスト」の入賞作品を発表するとともに表彰式を行った。
同コンテストは、国内外の技術者および学生を対象に、最新のTRON仕様のリアルタイムOS(RTOS)である「μT-Kernel 3.0」を用いたマイコンのアプリケーションやミドルウェア、開発環境、ツールなどの各分野でプログラミング内容を競う。「RTOSアプリケーション一般部門」「RTOSアプリケーション学生部門」「RTOSミドルウェア部門」「開発環境・開発ツール部門」の4部門で参加募集を行い、賞金総額は500万円となっている。
国内外から約60件のエントリーがあり、その中から最終的に30件の作品の応募があった。これらの作品について、利便性、実用性、独創性、将来性などの観点から総合的に評価しつつ、μT-Kernel 3.0のプログラムとしてRTOSのプログラムの特徴が実現できていることやオープンソースとして公開することなどを評価ポイントとして審査が行われた。
入賞は、優秀賞3件、入賞5件、激励賞2件。優秀賞には、RTOSアプリケーション一般部門のJiabin WANG氏による「人体の圧力値をリアルタイムで測定できる装置のプログラム」、RTOSアプリケーション学生部門の同志社大学ネットワーク情報システム研究室による「マイコンde協調型自動運転」、開発環境・開発ツール部門の阿部耕二氏による「NT-Shell・CppUTestを使用した簡易テスト環境」が選ばれた。
部門 | 賞 | 受賞者 | 作品名 | 概要 |
---|---|---|---|---|
RTOSアプリケーション一般部門 | 優秀賞 | Jiabin WANG | 人体の圧力値をリアルタイムで測定できる装置のプログラム | パルスセンサーに指を触れることで心拍変動を測定しストレスレベル指数をLCDに表示する人体のストレスチェッカー |
入賞 | 湯澤竜也 | サブセットPLCインタプリタ | μT-Kernel+micro:bitでPLC(Programmable Logic Controller)を実現 | |
入賞 | 奥田顕浩 | 職住環境チェッカー | 温度・湿度・照度・色温度・CO2濃度をリアルタイムで測定してLCDに表示 | |
RTOSアプリケーション学生部門 | 優秀賞 | 同志社大学ネットワーク情報システム研究室 | マイコンde協調型自動運転 | micro:bit搭載のロボットカー(maqueen)をコース上で同時に複数台動かした上で、同じ区間に複数のmaqueenが進入して衝突することがないように制御 |
入賞 | 李きん佳 | Pawpaw | 飲水容器に水位センサーとジャイロセンサーを取り付け情報を取得し、デジタル植物やデジタルペットによって、飲水を促すシステム | |
RTOSミドルウェア部門 | 入賞 | 久保寺祐一 | MQTTプロトコルによる通信を実現するためのライブラリ | μT-Kernel 3.0でMQTT通信を実現するためのライブラリ「mtk3bsp2_mqtt」 |
入賞 | 本谷茂 | Comado | 組込みマイコンのためのウインドウシステム | |
激励賞 | 須藤義明 | ハウスOS想定の後付けリモートスイッチシステム ATA-02 | トロンフォーラムが提唱するハウスOSの理念を取り入れ、家庭内のスイッチ操作を自動化する次世代スマートホームシステム | |
開発環境・開発ツール部門 | 優秀賞 | 阿部耕二 | NT-Shell・CppUTestを使用した簡易テスト環境 | 組込み向けシェルライブラリNT-Shellと、 C/C++向けユニットテスト・フレームワークCppUTest (共にオープンソース)を利用したμT-Kernel 3.0用の簡易テスト環境 |
激励賞 | 西田雄亮 | mtdbg | UART経由でPCからμT-Kernel/DSの呼び出しができるリモートデバッガ | |
TRONプログラミングコンテストの受賞作品 |
審査委員長を務めたトロンフォーラム 会長で東洋大学情報連携学部(INIAD) 学部長の坂村健氏は「いずれもμT-Kernel 3.0を活用した入賞作品にふさわしいものと考えられるが、RTOSの機能を最大限に活用し、RTOSを使ったからこそ実現できた作品であるかという点では、さらなる可能性が残されているように思われる。本コンテストは第1回目の開催となるが、好評につき次回の開催も計画されている。今回のコンテストを契機として、技術開発に新たな挑戦と刺激がもたらされ、組込みシステム開発の新たな地平が切り拓かれることを期待している」とコメントしている。
なお、坂村氏のコメントにある通り、第2回となる「TRONプログラミングコンテスト2025」の開催も決定している。第1回と同様に、μT-Kernel 3.0の評価ボードを展開するインフィニオン テクノロジーズ ジャパン、STマイクロエレクトロニクス、NXPジャパン、ルネサス エレクトロニクスが協賛するとともに、エントリー審査に合格した参加者に4社の評価ボードが無償で供与される。コンテスト内容の詳細発表とエントリー開始は2025年1月14日を予定している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- オープン化で裾野広がるμT-Kernel 3.0、プログラミングコンテストを起爆剤に
「2023 TRON Symposium」では、TRONプロジェクトのRTOS「μT-Kernel 3.0」をテーマに大手マイコンメーカー4社が協賛する「TRONプログラミングコンテスト」が発表された。本稿では、このμT-Kernel 3.0関連を中心に2023 TRON Symposiumの展示を紹介する。 - μT-Kernel 3.0のプログラミングコンテスト開催、1次審査合格で評価ボードを供与
トロンフォーラムは、リアルタイムOS「μT-Kernel 3.0」を用いた「TRONプログラミングコンテスト」を開催する。アプリケーション、ミドルウェア、ツール/開発環境の3部門で実施し、1次審査合格者に評価ボードを無償で供与する。最優秀賞や特別賞を含めた賞金総額は500万円だ。 - 本格オープンソース化する「μT-Kernel 3.0」はIoTの可能性を切り開けるか
TRONプロジェクトが「IoT-Engine」の構想発表から約6年、同プロジェクトが提唱する「アグリゲートコンピューティング」を実現するオープンな標準プラットフォーム環境として展開されてきた。本稿では、このIoT-Engine関連の展示を中心に「2021 TRON Symposium」の展示を紹介する。 - 次なるインフラを担うTRON、URの板状住宅をリノベしたスマートホームも公開
トロンフォーラムが「2022 TRON Symposium−TRONSHOW−」の記者発表会を開催。2022年のTRON Symposiumの見どころや、TRONプロジェクトの最新トピックスなどを発表するとともに、UR都市機構と東洋大学情報連携学部が共同で進めるスマートホームの研究プロジェクト「Open Smart UR研究会」の成果である「生活モニタリング住戸」を公開した。 - IoT-Engineの現在地を見定める、存在しないはずの「T-Kernel 3.0」が登場
TRONプロジェクトが「IoT-Engine」の構想発表から約6年、同プロジェクトが提唱する「アグリゲートコンピューティング」を実現するオープンな標準プラットフォーム環境として展開されてきた。本稿では、このIoT-Engine関連の展示を中心に「2021 TRON Symposium」の展示を紹介する。 - IoT-EngineがSigfoxと連携、アグリゲートコンピューティングの世界は広がるか
「2019 TRON Symposium」の展示会場では、構想発表から4年が経過し、一定の熟成を見せつつあるIoT-Engineの関連製品が披露された。Sigfoxを用いた通信に対応するなど、IoT-Engineにつながる世界は着実に広がりつつある。