μT-Kernel 3.0のプログラミングコンテスト開催、1次審査合格で評価ボードを供与:組み込み開発ニュース
トロンフォーラムは、リアルタイムOS「μT-Kernel 3.0」を用いた「TRONプログラミングコンテスト」を開催する。アプリケーション、ミドルウェア、ツール/開発環境の3部門で実施し、1次審査合格者に評価ボードを無償で供与する。最優秀賞や特別賞を含めた賞金総額は500万円だ。
トロンフォーラムは、「2023 TRON Symposium」(2023年12月6〜8日、東京ミッドタウンホール)において、大手マイコンメーカー4社が協賛する「TRONプログラミングコンテスト」の詳細を発表する。オープンソースソフトウェアとして利用可能なリアルタイムOS(RTOS)である「μT-Kernel 3.0」を用いたマイコンのアプリケーションに加えて、ミドルウェア、ツール/開発環境の3分野で実施される。1次審査合格者に評価ボードを無償で供与するとともに、最優秀賞や特別賞を含めた賞金総額は500万円となっている。
TRONプロジェクトのRTOSといえば「μITRON」が広く知られているが、現在はIoTへの対応も可能な機能を備えた「μT-Kernel」へと移行している。μT-Kernelは、バージョン2.0に当たる「μT-Kernel 2.0」がIEEE(米国電気電子学会)のIoT(モノのインターネット)エッジノード向けRTOSの国際標準であるIEEE 2050-2018になったことが知られており、このμT-Kernel 2.0と完全互換となる最新のTRON仕様RTOSがμT-Kernel 3.0だ。
GitHubで公開されるなどオープンソースソフトウェアとなったμT-Kernel 3.0は、大手マイコンメーカーからもソフトウェア開発に必要な評価ボードがリリースされている。今回のTRONプログラミングコンテストでは、μT-Kernel 3.0の評価ボードを展開するインフィニオン テクノロジーズ ジャパン、STマイクロエレクトロニクス、NXPジャパン、ルネサス エレクトロニクスが特別協賛しており、1次審査に合格した応募者にはこれら4社に加えてパーソナルメディア提供の「Micro:bit」の中から申し込み内容に合わせたものが無償で供与される。
コンテストは「RTOSアプリケーション部門」「RTOSミドルウェア部門」「開発環境・ツール部門」の3部門に分けて実施される。審査委員長はトロンフォーラム 会長で東洋大学情報連携学部(INIAD) 学部長の坂村健氏が、審査員はインフィニオン テクノロジーズ ジャパン 代表取締役社長の川崎郁也氏、STマイクロエレクトロニクス、マイクロコントローラ&デジタル製品グループ アジアパシフィック地区ディレクターのパオロ・オテリ氏、NXPジャパン マーケティング統括本部 本部長の大嶋浩司、ルネサス エレクトロニクス IoTプラットフォーム事業部 シニアダイレクターの服部敬宙氏の4人が務める。
コンテストは、若手開発者や一般の開発者、大学/高専などの学生を対象としている。1次審査のエントリー期間は2023年12月11日〜2024年2月29日で、応募部門とプログラム内容、使用したいマイコンの評価ボードを申請することになる。1次審査合格者にはマイコンの評価ボードが供与されるので、それを使って応募内容のプログラムを開発して提出する。応募プログラムの提出期間は、2024年3月11日〜6月30日。同年7月の表彰式において、各部門の最優秀賞、優秀賞、特別賞を発表する予定である。賞金総額は500万円となっている。
審査委員長の坂村氏は「μT-Kernel 3.0の普及に向け大手マイコンメーカー4社の協力の下でプログラミングコンテストを開催できることはうれしい。Webアプリケーションなどと比べて組み込みシステムのソフトウェア開発はハードルが高いイメージがあるかもしれないが、若手開発者や学生の皆さんにはぜひ参加してもらいたい。1次審査を通過するだけでマイコンの評価ボードが無償で手に入るし、マイコンメーカー4社やトロンフォーラムからもトレーニングウェビナーなどでサポートしていく予定だ」と述べている。
なお、TRONプログラミングコンテストの詳細は、2023 TRON Symposiumの2日目に当たる2023年12月7日午前の講演で発表される予定だ。
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