ヒトiPS細胞由来の角膜上皮細胞を移植する臨床研究で安全性を確認:医療技術ニュース
大阪大学は、ヒトiPS細胞由来角膜上皮細胞シートを角膜上皮幹細胞疲弊症患者に移植する臨床研究を完了した。4例全てで安全性が確認され、矯正視力の改善、角膜混濁の減少が認められた。
大阪大学は2024年11月8日、ヒトiPS細胞由来角膜上皮細胞シートを角膜上皮幹細胞疲弊症患者に移植する臨床研究が完了したと発表した。4例全てで安全性が確認され、矯正視力の改善、角膜混濁の減少が認められた。
臨床研究では、4人の患者にヒトiPS細胞から作製した他家角膜上皮細胞シートを移植。安全性と有効性を評価する1年間の観察期間と、主に安全性を評価する追加1年の追跡調査期間で経過を観察した。なお、症例1と2は免疫抑制剤を内服し、症例3と4は免疫抑制剤を内服しなかった。
主要評価項目の有害事象については、観察および追跡の両調査期間を通して、腫瘍形成や拒絶反応などを含む重篤な有害事象は発生しなかった。発生した有害事象で臨床的に重要なものはなく、後遺症なく対処できた。
副次評価項目については、全症例で、術後1年時点における角膜上皮幹細胞疲弊症の病期改善と角膜混濁の減少が認められた。
矯正視力に関しても、全例で改善した。症例1で0.03から0.3、症例2で0.01から0.15、症例3で0.15から0.7、症例4で0.02から0.04に向上した。角膜上皮欠損、自覚症状、QOLアンケートスコア、角膜新生血管については、ほとんどの症例で改善もしくは不変だった。
今回の研究は、ヒトiPS細胞由来の角膜上皮細胞シートを他家移植するFirst-in-Human(ヒトに初めて投与する)臨床研究となる。研究グループは今後、治験につなげて標準医療への発展を目指す。
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