ICTインフラが支えるイタリアのeヘルスとAI法対応:海外医療技術トレンド(113)(1/4 ページ)
本連載では2024年に入って、欧州地域からフィンランド、デンマーク、エストニア、フランスのeヘルスを取り上げてきた。今回はイタリアの最新動向を取り上げる。
本連載では2024年に入って、欧州地域からフィンランド、デンマーク、エストニア、フランスのeヘルスを取り上げてきた。今回はイタリアの最新動向を取り上げる。
eヘルスとデジタルインフラで注目されるイタリアのICT
2022年12月、欧州議会と欧州理事会は、「デジタルの10年政策プログラム2030」(関連情報)を採択した。このプログラムは、欧州連合(EU)のデジタル化における2030年の目標として、以下の4つを重点に掲げている。
- 公共サービスのデジタル変革
- 主要な公共サービスをオンラインで利用可能に
- 全EU市民が自らの医療記録へのアクセス可能に
- 80%のEU市民がデジタルIDを利用
- ビジネスのデジタル変革
- 欧州企業の75%がクラウドサービス、ビッグデータ、AI(人工知能)を使用
- 90%以上の中小企業が基礎レベルのデジタル化を達成
- デジタルスキル
- 全成人の80%が基本的なデジタルスキルを習得
- 2000万人の追加的なICT専門家の雇用を創出
- デジタルインフラストラクチャ
- 全世帯でギガビッド接続を確立、全人口密集地は5Gでカバー
- 最先端半導体の世界シェア20%以上
- 気候中立でセキュアな1万のエッジノードを配備
- 2025年までに量子アクセラレーションを備えた初のコンピュータを開発
2024年7月2日、欧州委員会は、上記プログラムの進捗状況をまとめた「デジタルの10年2024:カントリーレポート」(関連情報)を公表している。そのうち、「イタリアのデジタルの10年2024:カントリーレポート」(関連情報)では、EU目標に対するイタリアの重要業績評価指標(KPI)の達成率を示している(図1)。
図1 EU目標に対するイタリアの重要業績評価指標の達成率[クリックで拡大] 出所:European Commission「Italy 2024 Digital Decade Country Report」(2024年7月2日)
この報告書では、イタリアの主な強み/進捗領域として、以下の2点を挙げている。
- eヘルス:イタリアは、電子健康記録(EHR)へのアクセスに関して100点中82.7点で、EU平均(79.1点)を上回った。EHRは、イタリア全域で導入されており、2023年には大幅に進展している(+15.9%)
- デジタルインフラストラクチャ:FTTPやVHCN(固定超高容量ネットワーク)の目標達成率はともに59.6%でEU平均を下回っているが、年々、確実に伸びている。
他方、イタリアの主な弱み/要改善領域として、以下の2点を挙げている。
- 企業やユニコーンにおけるクラウドの採用:イタリアの企業でAIを使用しているのは5%で、EU平均(8%)を下回っている
- 基礎的なデジタルスキル:イタリアの人々のうち、基本的なデジタルスキルを持っているのは45.8%で、EU平均(55.6%)を下回っている
イタリアでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)緊急対応時の教訓を受けて、遠隔診療やEHRに代表されるeヘルス技術の導入が進んだ反面、強化されるデジタルインフラのメリットを活用できるような人材の育成が課題となっている。
最後に、この進捗報告書では以下のような提言をしている。
- 基本的なデジタルスキル:すべての対象グループに渡って、デジタルスキルを向上させるための取り組みを強化する
- 企業によるAIの採用:特にAIに注目し、イタリア特有の障壁や推進要因を考慮しながら、企業による技術の採用を強化する。
- ユニコーン企業:スタートアップや革新的企業のエコシステムを維持するための取り組みを強化し、効果的な金融ツール、企業の規模拡大を支援するためのイニシアチブ、研究部門と産業部門の間のシナジーを促進する
- ICT専門家:高等教育におけるICTプログラムを拡大し、ICT教育およびキャリアへの女性の参加を増やすための具体的な措置を採用する
そして、イタリアは、デジタルの10年の目的や目標に向けて、パフォーマンスを改善し、競争力やレジリエンス、主権を促進し、欧州の価値や気候変動対策を推進する必要があるとしている。
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