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2024年度上期の新車生産は4年ぶりに前年割れ、足元も厳しく自動車メーカー生産動向(4/4 ページ)

型式指定の認証不正問題や中国市場の競争激化などにより、日系自動車メーカーの新車生産が落ち込んでいる。日系乗用車メーカー8社の2024年度上期の世界生産合計は、4年ぶりに前年度実績を下回った。

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ダイハツ工業

 8社中、最も厳しい落ち込みを見せたのが認証不正問題で揺れたダイハツだ。2024年度上期のグローバル生産は、前年同期比10.5%減の68万6512台と2年連続で前年実績を下回った。それでも1〜6月の前年から3割以上減らしていた状況からは大きく改善した。

 国内生産は、23年12月末にOEM(相手先ブランドによる生産)供給モデルを含む全車種の生産と出荷を停止。2月以降、順次生産を再開してきたが、前年同期比18.2%減の30万2261台と5年連続で減少し、8社の国内生産として最も大きな落ち込み幅となった。内訳は軽自動車が同19.9%減の21万5334台、登録車は同13.7%減の8万6927台だった。

 ダイハツは、国内最量販車種の「タント」を4月10日から、「トール/ルーミー(トヨタ)」も同月19日から生産を再開。7月17日には「ロッキー/ライズ(トヨタ)」のHEVを再開し、全ての現行車種の生産を再開した。ただ、認証不正の影響は続いており、一連の不正問題を受けて、新規開発や認証業務を中断したことで、新型車の投入や一部改良の計画を変更せざるを得なくなっている。現在、11月から継続生産車にも適用される新たな法規への対応を順次進めている状況で、一部車種で生産を停止している。

 好調が続いていた海外生産も伸び悩んでいる。2024年度上期は、前年同期比3.3%減の38万4251台と4年ぶりに減少した。インドネシアが自動車ローンの金利上昇などにより市場が低迷し、同11.1%減と台数を落としたことが主因だ。一方、マレーシアは同8.2%増と好調で、年度上期として過去最高を更新した。

ダイハツの9月の状況

 着実に回復を進めてきたダイハツだが、足元では減速感が出ている。9月単月の世界生産は前年同月比15.1%減の13万3443台と2カ月連続で減少した。中でも海外生産は同19.3%減の5万7776台と大きく落ち込み4カ月連続のマイナス。インドネシアが同13.0%減と低迷したことに加えて、これまで好調だったマレーシアは前年が好調だった反動などもあり、同27.3%減と大幅減となった。

 国内生産も低迷し、前年同月比11.5%減の7万5667台と、2カ月連続のマイナス。登録車は同5.5%増だったが、軽自動車が同18.0%減と落ち込んだ。前年9月が取引先の工場火災対応で挽回生産を図っていたため、その反動が表れた格好だ。

マツダ

 8社の中で最も好調だったのがマツダだ。2024年度上期のグローバル生産台数は、前年同期比1.6%増の60万2595台と3年連続で増加した。けん引役は海外生産で、同17.1%増の22万6952台と3年連続のプラス。8社の海外生産で最も高い伸びを示し、唯一の2桁パーセント増だった。

 要因は、需要が堅調な北米で、米国工場を2直化したことで伸長した。タイも現地の経済低迷による需要減は続いているが、オーストラリアやベトナム向け「CX-3」の輸出が増えたことでプラスを確保した。一方、中国は23年5月に投入した新型車「CX-50」の反動減の他、市場のEVシフトの影響などにより減少した。

 国内生産は伸び悩み、前年同期比5.9%減の37万5643台と4年ぶりのマイナスだった。海外生産が伸長したことで、世界生産に占める国内生産比率もこれまでの3分の2程度から62%まで低下している。「CX-90」が同42.0%増など「ラージ商品群」の生産は増えたものの、「CX-8」や「CX-9」など従来のSUVモデルの生産終了が響いた。また、主力モデルの「CX-5」が同19.8%減と大幅減となったことも全体のボリュームを押し下げた。

マツダの9月の状況

 マツダも足元の減産が顕著だ。9月単月のグローバル生産台数は、前年同月比12.5%減の10万4291台と2カ月連続で減少した。中でも国内生産は、同18.8%減の6万5047台と2カ月連続のマイナスで、8社の国内生産で減少率が最も大きかった。生産終了したCX-8の反動の他、主力のCX-5が同40.8%減の大幅減、前年から生産を開始したCX-90も同14.9%減と低迷した。

 海外生産は、前年同期比0.4%増の3万9244台と6カ月連続で増加。8社で唯一のプラスだった。車種別では、2直化した米国工場の能力増強によりCX-50が同21.9%増とけん引したが、中国の低迷などにより「マツダ3」は同55.5%減と半減した。

スバル

 スバルの2024年度上期のグローバル生産は、前年同期比3.7%減の47万5061台と3年ぶりに前年実績を下回った。8社の順位では、三菱自動車を上回り7位だった。

 このうち国内生産は、前年同期比7.0%減の29万7698台と3年ぶりに前年割れとなった。新型「フォレスター」生産立ち上げに伴う制約が減産要因となった他、2月に群馬製作所矢島工場(群馬県太田市)で男性社員が崩れた金型に挟まれて死亡する事故が発生したことを受けて生産ペースを落として操業していたことも影響した。唯一の海外拠点である米国生産は、同2.5%増の17万7363台と3年連続で増加した。米国販売が同5.2%増と好調で、高水準だった前年同期を上回った。

 9月単月のグローバル生産台数は、前年同月比6.9%減の8万6334台と3カ月連続のマイナス。国内生産は同9.4%減の5万6468台と2カ月連続の減少。これは前年9月が生産ライン工事による調整で一時的に増えたことの反動減が要因。海外生産も同1.6%減の2万9866台と3カ月連続のマイナスだった。

三菱自動車

 三菱自の2024年度上期のグローバル生産台数は、前年同期比8.7%減の44万2907台と2年連続で前年実績を下回った。8社の順位ではスバルに抜かれ最下位となった。

 要因は海外生産の低迷で、前年同期比15.9%減の21万5145台と2年連続の減少。8社の海外生産では最も落ち幅が大きかった。フィリピンやベトナムは堅調だったが、タイが同22.8%減、インドネシアが同14.3%減と東南アジアの主要市場が低迷したあおりを受けた格好だ。その結果、アジアトータルでは同16.4%減となった。厳しい現状について三菱自動車 社長の加藤隆雄氏は「政府の景気刺激策の効果が出始めれば、台数が増えていく可能性も十分にある」と今後の市場回復に期待を寄せる。

 国内生産は、前年同期比0.6%減の22万7762台と前年並みだが、4年ぶりに減少した。23年5月に投入した軽自動車の新型車「デリカミニ」が高い人気で台数を伸ばしたものの、「アウトランダー」「エクリプスクロス」が低迷した他、日産にOEM供給するEV「サクラ」が大幅に減少した。

 足元の状況も厳しさは変わらない。9月単月のグローバル生産は、前年同月比10.4%減の8万4563台と8カ月連続のマイナス。このうち海外生産は、同14.7%減の4万2300台と8カ月連続で減少した。タイは同31.2%減と依然として低迷しているが、インドネシアは同18.4%増と回復。アジアトータルでは同14.8%減だった。

 国内生産も伸び悩み、前年同期比5.6%減の4万2263台と2カ月連続で減少した。人気のデリカミニは依然として好調だが、エクリプスクロスやサクラが低迷した他、台風10号の影響で稼働停止したこともマイナスにつながった。

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