検索
ニュース

島津製作所は標準化を武器に、知財と組み合わせてシェア100%の例も製造マネジメントニュース(2/2 ページ)

島津製作所はISO/TC107第36回総会の開催に合わせてメディアなど向けに国際標準化の取り組みについて説明した。

Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

米国でも標準化活動

 米国では、子会社のShimadzu Scientific Instrumentが環境関連の分析手法を開発し、EPA(米国環境保護庁)への公定法化提案を行っている。また、民間規格制定機関(ASTM International)にも参画し、標準化活動に取り組む。

 この成果として、ガスクロマトグラフ質量分析計による水質中ダイオキシン類の分析法開発の事例がある。2024年度にEPAから工程法として承認され、汎用的なガスクロマトグラフ質量分析計での分析が可能になった。

飲料水中の52種類のPFASを分析可能に

 環境や健康への影響が懸念されている化学物質PFAS(有機フッ素化合物)の規制関連にも取り組んでいる。PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)やPFOA(ペルフルオロオクタン酸)など一部のPFASはPOPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)によって先行して規制されているものの、PFASは種類が非常に多いため個別の有害性に関する知見が十分ではない。そのため、各国で研究が進められ、規制も検討されている。

 具体的には、飲料水を中心に規制値や目標値が定められ、測定法の標準化が進められている。土壌や大気、食品など飲料水以外も標準化が検討されている。これを受けて島津製作所は、飲料水に関しては米国の規制EPA method 533、537.1に対応したパッケージを発売。飲料水中の52種類のPFASを分析できるようにした。

 飲料水以外では、米国を中心に約90カ国、3000人以上の会員が所属しAOAC法など検査法のバリデーションと出版活動を行っている団体AOAC Internationalでの「食品中のPFAS分析法」の標準化に参画している。

オープン/クローズ戦略でシェア獲得

 標準化によるオープン化だけでなく、知財独占も組み合わせてシェア拡大につなげる「オープン/クローズ戦略」にも注力している。研究開発の成果を社会実装するには、開発段階からオープン/クローズ戦略を構築、活用することが重要だとしている。

 その事例が、デジタルX線画像検出器(FPD、Flat Panel Detector)を搭載した回診車(病院内などを移動させて病室などでX線撮影ができる装置)だという。オープンにしたのはFPD搭載技術で、クローズにしたのはパワーアシスト技術だ。FPD搭載技術に関しては、FPD自体が購入品で強みがないことから特許を行使せず業界標準とすることを目指した。

 FDA(米国食品医薬品局)やPMDA(医薬品医療機器総合機構)に対して、競合各社も病院内での無線LAN利用を申請。これが承認されたことで市場が拡大した。病室での撮影だけでなく、野戦病院や被災地での利用や、感染症対策での用途もあって市場が拡大した。

 パワーアシストは、走行性能が強みであることから、特許やノウハウを完全クローズとし、競合からの実施許諾要請も拒否した。その結果、複数社からOEM(相手先ブランドによる生産)の要請があり、日本国内ではシェア100%、米国でもシェアが一時首位となった。

バイオ素材にもオープン/クローズ戦略

 オープン/クローズ戦略は、経済産業省の特定新需要開拓事業活動計画認定制度(OCEANプロジェクト)による支援も受けている。OCEAN(Open & Close strategy with Exploiting Academic kNowledge)プロジェクトでは、標準化と知的財産を一体的に活用することで、研究開発成果の社会実装や市場形成を推進し、企業の収益力向上につなげる取り組みだ。

 島津製作所はOCEANプロジェクトにおいて、名古屋大学とともに、非化石由来の燃料や原料への転換とCO2の回収、活用を正しく評価する「キャビティリングダウン分光法による放射性炭素(14C)の測定を通じたCO2起源の識別技術」を共同開発している。化石由来、非化石由来の材料が混在しうる合成燃料やバイオプラスチックをターゲットに、放射性炭素を測定することでバイオベース度の認証を表記できるルール作りを進める。

→その他の「製造マネジメントニュース」関連記事はこちら

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る