低コストかつ低環境負荷で酸化物負極をリサイクルする手法を開発:リサイクルニュース
東芝は、簡易な熱処理のみでリチウムイオン電池の酸化物負極を低コストかつ低環境負荷でリサイクルする手法を開発した。リチウムイオン電池のリサイクル促進や製品のCFP低減のニーズに対応する。
東芝は2024年11月6日、簡易な熱処理のみで、リチウムイオン電池の酸化物負極を低コストかつ低環境負荷でリサイクルする「ダイレクトリサイクル手法」を開発したと発表した。リチウムイオン電池のリサイクル促進や、製品のCFP低減のニーズに対応する。
今回開発した手法は、安定性のある結晶構造を持つ酸化物活物質の特徴を活用し、活物質を元素に戻さず活物質のままでリサイクルする。活物質は、酸化還元反応を用いて電気を貯蓄する物質で、集電箔と言われる薄い金属シートに塗布されており、この集電箔を通して活物質に電気を貯めたり取り出したりする。
活物質の安定的な構造を活用し、熱処理だけの簡便な手法で活物質をその状態を維持したままで負極電極の集電箔から分離する。活物質の安定性により再活性する複雑な工程が必要なく、低コストで活物質を再利用できる。
従来の電極のリサイクルで使われる手法と比べて低温での処理が可能で、低い環境負荷でリサイクルできる。新品のバージン材と同手法でリサイクルしたリサイクル材を比較した結果、最大85%のCFP低減を試算した。同手法を酸化物負極粒子のニオブチタン酸化物(Niobium Titanium Oxide、NTO)負極電池の負極に適用したところ、再生した電極で作製した電池の性能は、リサイクルした電極でも新品と同レベルの97%以上の活物質容量を保持し、充放電を繰り返しても、容量低下も新品と同等を維持して長寿命であることを確認できた。
酸化物負極材の中でも、NTOは安定した活物質構造を持つ。この特徴を生かして熱処理を行い、活物質の特性を損なわずに負極中のNTOを接着するバインダー成分を分解し、集電箔から剥離を促進させ簡単に分離、回収できた。回収した活物質は、不純物成分を除去すれば、そのまま再利用すできる。
バージン材、電池製造工程における廃材(工程廃材)を模擬した電極からリサイクルした活物質、EOL(End of Life)までの劣化を模擬した電池からリサイクルした活物質の性能比較、活物質容量(左)、サイクル特性(右)[クリックで拡大] 出所:東芝
同社は今後、工場で排出する電極の端材などの廃材を中心にリサイクル手法を改善していく。廃電池が市場から回収される時期には、製品にリサイクル材を組み込む再生の枠組みや、NTO負極セルを回収してリサイクルする循環体制の構築を目指す。
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