トヨタはさらなる「足場固め」へ追加投資、2024年度通期業績見通しも据え置き:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
トヨタ自動車が2024年度上期の連結業績を発表。認証不正問題による減産の影響があったものの前年同期比で売上高を伸ばし、営業利益は減益となるも小幅に抑えた。2024年度の通期業績見通しは据え置いたものの、2024年度から進めている「足場固め」で追加投資を行う方針である。
「足場固め」をどのように進めているのか
2024年度上期に実施した「足場固め」をどのように進めているかの説明も行われた。宮崎氏が目標として掲げるのが「全社でのリードタイム短縮」である。そのために必要なことは「無駄を省く、やり直しをなくす、誰でもできるようにすること」(同氏)だという。
例えば、重い部品の運搬について、従来は18kgの部品を人力で運搬していたところを、機械の力で負荷軽減するような誰でも働ける環境の整備や、付加価値を高める作業の割合である「正味率」を向上させる活動などに、部門を越え、機能を越えて、全社で取り組んできたとする。
具体的な取り組み事例として挙げたのが、社内で「AREA(エリア)35」と呼ぶ、開発/生産/販売が一体となった正味率の改善プロジェクトだ。国内10工場において、部品種類を最大80%削減することで、広い面積が必要だった在庫スペースを35%削減することに成功した。これにより、生産可能台数が年間で8万台増加し、フルモデルチェンジ3回分に相当する開発工数も捻出できたとする。宮崎氏は「国内10工場でのこの成果を全世界の54の工場に広げて、さらなる成長の原動力を創出する」と述べる。
「足場固め」によるリードタイム短縮は、足元で好調なHEVを中心とする電動車でも大きな効果を生み出す。2024年度に入ってからEVの需要にブレーキがかかる一方で、PHEVのニーズが高まるなど電動車の市場は変動が大きくなっている。トヨタ自動車は、HEVだけでなくPHEVとEV、FCEV(燃料電池車)なども手掛けマルチパスウェイを強みとしているが、今後はそれぞれの実需の変化に合わせたプロジェクトの見直しと生産の構えの変更をより柔軟に行える体制を構築して対応していく方針である。
また電動車の普及を進める上で重要なバッテリー技術の手の内化の施策では、100%子会社化によってプライムアースEVエナジーから社名変更したトヨタバッテリーで三元系を、パナソニック ホールディングスとの合弁であるプライム プラネット エナジー&ソリューションズでLFP(リン酸鉄)系を、豊田自動織機との共同開発で全固体電池の開発を進めていく。電池の種類当たりの生産効率の向上に向けて、EV用とPHEV用の電池の共用化なども図って柔軟性を確保するとしている。
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