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相鉄バスの新型自動運転バスに見る可能性、レベル4技術は鉄道に応用できるのか自動運転技術(4/4 ページ)

2019年から自動運転バスの実用化に取り組んできた相鉄バスだが、2024年に入ってから新たなスタートを切った。新型自動運転バスの実証実験の内容について紹介するとともに、これらの技術を鉄道に応用する可能性を検討してみたい。

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鉄道にも応用できるのか

 今回の路車協調システムと先端通信技術の活用によるバスの自動運転で注目しているのは、鉄道にも応用できるかだ。

 鉄道車両の自動運転は1962年に営団地下鉄(現・東京メトロ)日比谷線3000系の一部編成、無人運転は1981年に相次いで開業した神戸新交通ポートライナー、大阪市交通局(現・大阪市高速電気軌道)ニュートラムで実用化されている。

 上記は乗客が確実に見込める大都市向きで、地方のローカル線などには高額投資になるので導入しづらい。さらに実用化されたのは全て電車だ。自動運転バスの試験車両がガソリン車であることを考えると、動力機関が内燃機関の気動車にも導入できる可能性を秘めている。自動運転バスのレベル4運転が実現すると、気動車の無人運転実現も期待できる。

宇都宮ライトレール開業後、自動車との接触事故が度々発生した
宇都宮ライトレール開業後、自動車との接触事故が度々発生した[クリックで拡大]

 また、路面電車はATS(Automatic Train Stop device:自動列車停止装置)、ATC(Automatic Train Control:自動列車制御装置)といった保安装置が整備されておらず、安全性に乏しく、事故が発生しやすい欠点がある。

 車両側に今回の自動運転バスと同じものを装備し、路車協調システムと先端通信技術を活用することで、安全性の向上、レベル4運転による列車本数の維持や増発が図れるのではないだろうか。

 鉄道にも導入できる可能性について、NTTコミュニケーションズにきいてみた。

「映像伝送という観点から言うと、映像を送るということは変わらないと思うので、そこのネットワークを整えていくというのは、同じ考え方になると思っています。
(中略)ただ、鉄道になると、線路もできているので、違う方向性で考えていかなければいけないのかなと思います」

レベル4による自動運転バスは早期に実用化してほしい

 路車協調システムと先端通信技術の活用による自動運転バスの実用化には、まだまだ時間が必要だという。

横浜市交通局の市営バスも運転士不足による減便や路線廃止が発生した
横浜市交通局の市営バスも運転士不足による減便や路線廃止が発生した[クリックで拡大]

 バス運転士の不足は2023年に顕著となり、全国で1万人が不足している。現在も減便や路線の廃止に歯止めがかからない状況だ。このままだと2030年には全国で3万6000人が不足する見込みである。

 鉄道も同じ状況で、長野電鉄は2024年9月11日(水曜日)から12月10日(火曜日)まで特急の一部列車を運休。JR四国も同年9月29日(日曜日)にダイヤ改正を実施し、予讃線や土讃線の普通列車減便に踏み切った。

 今回の自動運転バスやそれを応用した列車の新しい自動運転システムが早期に実用化しないと、利便性低下に歯止めがかからない他、町自体の衰退がさらに進む恐れもある。遅くとも2030年代まで実用化に踏み切ることを切に願う。

プロフィール

岸田 法眼(きしだ ほうがん)

『Yahoo! セカンドライフ』(ヤフー刊)の選抜サポーターに抜てきされ、2007年にライターデビュー。以降はフリーのレイルウェイ・ライターとして鉄道の最前線に立つ他、好角家の一面も持つ。著書に『波瀾万丈の車両』『東武鉄道大追跡』(アルファベータブックス刊)、『大阪の地下鉄大研究』(天夢人刊)がある。また、『岸田法眼の旅、鉄道、プロ野球、大相撲などを幅広く語る』(フーミー刊)では、有料マガジンを毎月5回程度配信している。

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