ここまで進んだ自動車業界の生成AI活用 CES 2024レポート(前編):世界の展示会で見たモノづくり最新動向(1)(1/2 ページ)
この連載ではMONOistとSalesforceのインダストリー専門家が協力して、世界各地の展示会から業界の最新トレンドをお届けします。第一弾では2024年1月9日〜12日にかけて米国のラスベガスで開催されたCES (Consumer Electronics Show)より、自動車業界の生成AI活用のトレンドについて紹介します。
2022年11月にOpenAIがリリースした生成AI(人工知能)「ChatGPT」は、文章生成の精度の高さが話題となり、2023年にはその活用が業界を横断した大きなブームとなりました。それは自動車業界でも例外ではありません。2024年1月9〜12日にかけて米国のラスベガスで開催された「CES 2024」においても、自動車メーカー、ITベンダー、半導体ベンダーなどによる、生成AIを活用したさまざまな技術が紹介されました。
CES 2024における自動車業界の生成AIの活用をカテゴライズすると、(1)パーソナライズされた車内体験の提供、(2)アフターサービスの業務効率化、(3)SDV(Software Defined Vehicle)の開発支援の、大きく3つに分類できると考えられます。その3つのカテゴリーをベースにCESでの展示内容を紹介します。また、プレスカンファレンスは一般に公開されていたものから、筆者が実際に聞いた内容を中心に紹介します。
パーソナライズされた車内体験の提供
生成AI関連で特に目立ったのが、搭乗者向けの車内体験への活用でした。具体的なユースケースとしては、パーソナルアシスタントやダッシュボードのイメージ生成などです。いくつか事例を紹介します。
メルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz)は自社開発したLinuxベースの車載OS「M.B. OS」を発表しました(※1)。M.B. OS上で動くアプリケーションの中で特に強調していたのが、ChatGPTを活用したバーチャルアシスタントです。「ヘイ、メルセデス」と呼びかけた後に質問すると、リアルタイムで応答します。また、声色や会話から相手の気分を読み取ることも可能で、質問者の気持ちに合わせた回答や反応を示していました。
米国のPC情報メディア「PC Mag」によれば、メルセデス・ベンツのCTOであるマーカス・シェーファー氏は「当社ではChatGPTを活用した音声アシスタントの検証を進めており、応答率が劇的に向上している」(筆者翻訳)と明らかにしています。ただし「お客さまにより良い選択肢があれば、ChatGPTから新しいモデルに変える可能性はある」(同)とも述べており、変更の可能性があることに含みを持たせました。
またM.B. OSの機能として、車内で流す曲のジャケットやアルバム名に合ったイメージを、ダッシュボード上に生成するサービスも展示しており、「Cherry Juice」というアルバムを選択すると桜の花のイメージが生成されました。以下の写真がそのイメージです。
ソニー・ホンダモビリティのブースに展示されていた自動運転EV(電気自動車)「AFEELA(アフィーラ)」でも、車内で流す曲のジャケットや曲名に合わせて、ダッシュボードに関連するイメージを生成するサービスを紹介していました。CESの開催に先立って2024年1月8日に行ったプレス発表(※2)では、マイクロソフトと提携してAFEELAにパーソナルアシスタントを搭載することも発表しました。
※2:ソニー プレス発表
パーソナルアシスタントについては、その他にも多くの展示がありました。Amazon Automotive(アマゾン オートモーティブ)のブースでは、AmazonのAlexa LLM(大規模言語モデル)を活用したバーチャルアシスタントのデモを、BMWとのコラボレーションで紹介していました。
また、Googleのブースでは、車載OSであるAndroid Automotive(アンドロイド オートモーティブ)を搭載し、Googleアシスタントの利用が可能になったボルボ(Volvo Cars)のポールスター(Polestar)ブランドやフォード(Ford Motor)の最新車両を展示していました。Googleは2023年に、生成AIチャット「Bard」の機能をGoogleアシスタントと統合していくと発表しており、単なる会話での応答だけではなく、イメージやToDoリストの生成などへのAI活用が期待されています。
上記は全てネットワークを介したサービスですが、Qualcomm(クアルコム)のブースでは組み込み型のパーソナルアシスタントを紹介していました。オープンソースのLLMであるMetaの「LlaMA」を利用しています。自動車そのものに組み込んで搭載するため、通信状況が悪い郊外でもスムーズに応答できることを強みとしてアピールしていました。
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