機械工具業界特有の五月雨受注には半自動化で対応、山善が取り組む物流効率化:ITmedia Virtual EXPO 2024 夏 講演レポート(2/2 ページ)
「ITmedia Virtual EXPO 2024 夏」の「リテール&ロジスティクス サプライチェーンEXPO」において、山善 執行役員 営業本部エネルギー・ソリューション事業、建設監理、物流企画管掌の松田慎二氏が「山善が進める五月雨受注に対応した半自動化とラストワンマイル自社配送網拡充」と題して行った講演について紹介する。
住建デポを生産財事業でも並行利用
物流の効率化が強く求められる中で、山善グループでは2022年に先述した2030年ビジョンを掲げており、現在は第1タームとなる事業部間の物流クロッシングに取り組んでいるところだという。同社の5つの事業部は、これまでそれぞれ事業部最適となる物流ネットワークを構築してきたが、それぞれが持つ物流資産を事業部横断的に活用しようとするものだ。実現のために、まず独自のLMS、WMS、TMS(輸配送管理システム)を開発、導入し、各事業部の営業フロントシステムから操作できるようにした。これを2022年から随時契約倉庫に導入している。
次に進めているのが、住建事業が所管するデポ(住建デポ)における生産財事業との並行利用の実現だ。住建デポの配送網は、もともとエコキュートを2人で現場配送できるように構築しており、全国約100カ所で地場の運送業者との協力の下で運用してきた。ここに、生産財事業の工具類やMRO(副資材)という消耗材を高回転の小ロットの在庫として置き、遠距離の路線便に頼ることなく、住建デポにひも付く自社便によって配送を行う。この住建デポでの新たな取り組みを2024年度中に幾つか稼働させながらノウハウとスキームを作り上げていくことにしている。
続いて2025〜2027年度を第2タームとして、ヤマゼンロジスティクスは山善以外の荷主から物流業務の委託を受け、コストセンターからプロフィットセンターへの移行を目指す計画だ。最終の第3タームでは、同社の5つのコア事業を取り巻く3つの業界で、共同輸配送プラットフォームの一翼を狙えるような物流企業への転換を目指す。
これらの取り組みの起点となる物流情報システムは、各事業部の営業フロントシステムとの連携性を考えたLMS、また倉庫内のマテハン稼働との連動性を考慮したWMS、積載効率の最大化を目的としたTMSなどを総合的に勘案し、セイノー情報サービスの「SLIMS」を一部カスタマイズして採用した。これによりロジスという大型の配送拠点も住建デポという小型拠点も同じように営業から出荷オペレーションを行うことが可能となった。
販売店卸の受注から商品の出荷までの流れが煩雑な機械工具業界
機械工具業界の販売店卸の受注から商品の出荷までの流れは煩雑だ。小売店が小規模であることから、流通在庫を持たないところが多い。そのため、山善のような卸売会社が多品種の在庫を保有し、断続的に小売店から入ってくる注文に対し、的確に小口数量で届けるという対応をとっている。
これを五月雨(さみだれ)受注と呼んでいるが、受注の仕方も多品種で少数の商品をバラバラとメールやFAX、電話でオーダーしてくる。営業部の出荷手配に従いロジスは商品をピッキングし、締め切り時間までに用意し、出荷時には最小限の小口数になるように必要に応じた梱包を行い、出荷する。これらの名寄せ作業についても、得意先やアイテム数が多かったり、梱包に紙ベースの納品書を同梱したりと複雑な作業になり、担当者には一定のスキルが求められる。
山善では、こういった五月雨受注に対応するために「倉庫のシステムを完全に自動化するよりも、一部人手が入る半自動化の方が現実的でより効率が高くできると判断した」(松田氏)という。2023年1月に稼働したロジス東京の設計は、この思想を取り入れたレイアウトとした。具体的には、まずは入荷した商品を棚に収納してから、オーダーが入るに従ってピッキングを行うが、五月雨受注に対応するためオーダー方式のピッキングではなく、マルチオーダー(トータル)方式ピッキングを行う。
マルチオーダー方式ピッキングでは、次の工程で行バラシという作業が必要になる。そして、得意先別のバケットに仕分けて名寄せ作業を行う。その際に、定型梱包し路線便で出荷する荷物と、自社便で配送したり、相手先指定の住所を同梱させたりと、ひと手間かかる荷物群に分ける。前者は名寄せシャトルに格納し、後者はPTIやGAS(Gate Assort System)などの半自動仕分けシステムに収納する。さらには、それぞれの梱包作業を行い、送り状を貼付し、出荷をするという流れとなっているという。
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