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インタビュー

山善は「物流CROSSING」を経て輸配送プラットフォーマーを目指す物流のスマート化(1/3 ページ)

大手専門商社の山善は5つの事業部の連携によって新たな成長を目指す「CROSSING」を推し進めており、物流改革となる「物流CROSSING」も大きなテーマとなっている。この物流CROSSINGを担当する同社 執行役員の松田慎二氏に話を聞いた。

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 大阪市西区の立売堀に本社を置く山善は1943年創業の老舗かつ大手の専門商社だ。2022年度(2023年3月期)の連結業績は売上高5272億円、営業利益165億円などとなっている。創業当初から手掛ける機械工具を中心とした生産財関連事業にとどまらず、さまざまな分野に進出して事業を拡大しており、一般消費者にも「YAMAZEN」ブランドで独自に企画/開発している家電製品によって知られている存在だ。

 山善のこれまでの成長は、生産財関連事業に区分される機械事業、産業ソリューション事業、ツール&エンジニアリング事業、消費財関連事業を構成する住建事業、家庭機器事業の5つの事業部がそれぞれ成長に向けて独自にさまざまな施策を展開してきたことが原動力となっている。ただし、山善という企業総体としてのさらなる成長を目指すには、各事業部間での連携が不可欠になってくる。

 この連携の推進を象徴しているのが、2023〜2025年度の中期経営計画「CROSSING YAMAZEN 2024」にも出てくる「CROSSING」という言葉だ。山善が持つ多様な機能や資産をCROSSINGすることで、新たな価値創造を実現して生産財と消費財を扱う専門商社からの脱皮を図り、2030年企業ビジョンである「世界のものづくりと豊かなくらしをリードする」の達成を目指している。

 山善が目指すCROSSINGにはさまざまなテーマがあるが、生産財と消費財で合わせて約4500社から仕入れたさまざまな製品を、約8300社の販売先に対して送り届けるために各事業部が独自に構築してきた物流網のCROSSINGを実現する「物流CROSSING」も大きな一角を占めている。そこで、山善の執行役員で営業本部 グリーンリカバリー・ビジネス部長(エネルギー・ソリューション事業、建設監理、物流企画管掌)を務める松田慎二氏に、物流CROSSINGに向けてどのような取り組みを進めているのかを聞いた。

2030年に向けて3つのタームに分けて物流改革を推進

MONOist 現在の山善における物流網はどのような状態になっているのでしょうか。

山善の松田慎二氏
山善の松田慎二氏 出所:山善

松田氏 山善における物流網は5つの事業部が、それぞれ独自の意思を持って構築してきた背景がある。大まかに、機械、産業ソリューション、ツール&エンジニアリングの製品を扱う生産財と、住建、家庭機器の3つに分けられるが、これらで合計して国内に100カ所以上の物流拠点がある。また、社内における物流を手掛けるヤマゼンロジスティクスという子会社がある。

 物流CROSSINGでは、5つの事業部の知見やノウハウを掛け合わせつつ、100カ所以上ある物流拠点を有効活用し、ヤマゼンロジスティクスにも社内物流にとどまらない新たな価値を提供できるようにしていく狙いがある。

MONOist 山善における物流改革はどのように進めていく方針ですか。

松田氏 企業ビジョンで掲げる2030年に向けて3つのタームに分けて進めていくことになる。物流CROSSINGに当たる第1タームは現在進行形だが、5つの事業部がこれまで積み上げてきた物流に関するノウハウの掛け合わせから得た新た施策を、実際に今ある物流拠点に適用しながら、その適用範囲を順次広げていくことになる。2025〜2027年の次期中計に対応する第2タームは、国内物流拠点の全てで新たな施策を運用するとともに、ヤマゼンロジスティクスが生み出すであろう新たな価値も軌道に乗せていく。そして、2030年をめどとする第3タームでは、生産財、住建、家庭機器という3つの特定業界それぞれにおいて輸配送のプラットフォーマーとなることを目指している。

山善の物流改革は3つのタームに分けて進めていく
山善の物流改革は3つのタームに分けて進めていく。目指すのは特定業界の輸配送プラットフォーマーだ[クリックで拡大] 出所:山善

MONOist 現在進行形の第1タームの状況はどのようになっていますか。

松田氏 第1タームで重要な役割と果たすと考えているのがLMS(統合物流管理システム)とWMS(倉庫管理システム)だ。マテハンなどハードウェアとの連携が重要になると考えており、独自にシステムを開発した。現在は、このLMSとWMSを100カ所以上ある山善の物流拠点に順次導入を広げているところだ。

 これまで山善の物流拠点は、生産財と家庭機器の「ロジス」と住建の「デポ」の2種類で構成されてきた。大型の物流拠点であるロジスは大都市圏や各地方などを広くカバーする一方で、住建向けのデポはロジスとは取り扱い製品の特性が大きく異なることもあって、中規模〜小規模の拠点をきめ細かく配置している。

 第1タームの物流CROSSINGは、このロジスとデポを組み合わせることで、現在の事業環境に最適な物流網を構築する狙いがある。これまでデポは住建しか扱っていなかったが、生産財と家庭機器を扱えるようにするには情報を送るためのシステムが必要だ。新たに開発したLMSとWMSはそのためのものでもある。

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