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元日産の関氏が鴻海で考える、EVの苦境の乗り越え方電動化(3/3 ページ)

シャープは技術展示イベント「SHARP Tech-Day’24 “Innovation Showcase”」において、親会社である鴻海精密工業とともに推進するEV戦略を発表した。

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「高くて、不便で、もうからない」の出口

 関氏はEVのカギを握る「高くて、不便で、もうからない」について、今後の予測を示した。

 バッテリーの価格は、1年半前に1kWh当たり200ドルだったのが足元では130ドルまで低下。さらに、2027年ごろに1kWh当たり100ドルを下回ると予想されているという。ただ、耐久性に対するユーザーの不安は払拭されておらず、数年後の残価がエンジン車よりも大きく下落するため“EVは高い”というイメージがつきまとう。ただ、残価については後述するSDV(ソフトウェアデファインドビークル)によって改善できるとの考えだ。

 不便さに大きく影響する充電については、固体電池がポイントだという。400Vで28分かけて80%まで充電する現状を例に挙げ「給油に28分かかり、しかも80%までしか入れられないのでは誰も買わない。エンジン車とEVの最大の差がここにある。800Vでの充電なら15分に短縮できるが、急速充電器で先に2台のEVが待っていれば自分の充電が完了するまで45分かかる。これがいつ改善するのかというと、割と早い段階だ」と関氏は語った。

 自動車メーカーなどが固体電池を自社開発しているのと同様に、鴻海でも全固体/半固体電池の自社開発を進めており、2027〜2028年ごろには90%までの急速充電が5分で完了できるようになるという。「固体電池は高密度に振ることができるが、密度を抑えて充電スピードを追求することもできる。充電スピードに振っていけば、98%まで3分で充電できるようにもなるのではないか」(関氏)。

 充電時間の短縮は、充電インフラがもうかることにもつながる。「急速充電のインフラが整わないのは、充電時間が長くて全くもうからないからだ。中国には20万基の急速充電器があるが、ほとんどもうかっていない。充電時間が短くなってどんどんお客さんが入ってくるようになれば、政府か自動車メーカーがボランティアのように充電器を設置するのではなく、事業として投資できるようになる。こうした動きが2027〜2030年に起きるだろう」(関氏)。

 新車の開発コストもまだ抑える余地があるという。伝統的な自動車メーカーでは1つの新型車に「1000億円規模の開発費が必要で、開発期間も冗長だ」(関氏)。ただ、鴻海のモデルCの開発では、伝統的な自動車メーカーと比べてかなり開発費を抑えて、2年弱の開発期間で市場投入できたという。開発費を抑えることで、「年間10万台くらい売れないとペイしない」(関氏)という収益構造を改善し、少ない販売台数でも収益を確保していく考えだ。

SDVはクルマを長く使うためのもの

 SDVについても、関氏は持論を展開した。SDVの最大の狙いは、今買ったクルマも5年後に買ったクルマも差が出ないようにしていくことだという。車両に搭載されているソフトウェアをアップデート可能にして、寿命を長くし、快適性を向上させる。

 また、スマートフォンの外観の変化が年々小さくなっていることを引き合いに、クルマでもハードウェアの比重が軽くなり、ソフトウェアの重要度が増すと説明した。これまではモデルチェンジなどでハードウェアがアップデートされてきたが、SDVではハードウェアのアップデートが少なるという。ここでソフトウェアがアップデートされ、モーターやバッテリーの劣化抑制が進めば、これまでよりクルマを長く使えるようになるというのが、“5年後にも差が出ない”というコンセプトだ。

 SDVでロングライフ化が進めばクルマの残価が落ちるスピードも緩やかになり、乗り換えなどで手放す際の価値を現在より高められると関氏は説明した。ハードウェアのアップデート=モデルチェンジで残価が下がることも食い止められるという。「高価なものを一度作ったら、簡単には価値が落ちず長持ちする。それによって余計なCO2を出さないというのがEVの美しさだと考えている」(関氏)。


シャープ 専務執行役員 CTOの種谷元隆氏と鴻海精密工業の関潤氏[クリックで拡大]

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