EV普及の黒船か、フォックスコンがEVプラットフォームのライセンス提供開始:ジャパンモビリティショー2023(1/2 ページ)
台湾の鴻海精密工業/Foxconnが主導するMIH コンソーシアムは、「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」において、独自の3人乗りEVコンセプトカー「Project X」を出展した。さらに、同コンソーシアムで作ったEVプラットフォームのライセンス展開を開始し、その第1弾としてMモビリティにライセンス供与を行うと発表した。
電子機器受託生産(EMS)の世界最大手の企業グループである台湾の鴻海精密工業/Foxconn(フォックスコン)が主導するMIH コンソーシアム(MIH Consortium)は、「JAPAN MOBILITY SHOW 2023(ジャパンモビリティショー、旧東京モーターショー)」(プレスデー:2023年10月25日〜26日、一般公開日:10月28日〜11月5日、東京ビッグサイト)において、独自の3人乗り電気自動車(EV)コンセプトカー「Project X」を出展した。さらに、同コンソーシアムで作ったEVプラットフォームのライセンス展開を開始し、その第1弾としてMモビリティ(M Mobility)にライセンス供与を行うと発表した。
フォックスコンのノウハウを生かしEVプラットフォームを普及へ
MIH コンソーシアムは、鴻海精密工業/Foxconnが開発したEVに関するソフトウェア、ハードウェアのオープンプラットフォーム「MIH」の普及を促進するために、2021年7月に設立されたコンソーシアムだ。現在は鴻海精密工業/Foxconnの100%出資で活動している。コンソーシアム参加企業とのコラボレーションにより、レファレンスデザイン、標準規格を開発する他、MIHプラットフォームの普及を進めることで、EVの開発期間を短縮し、世界中でのEV開発促進を目指している。2023年10月27日時点でのMIH コンソーシアム参加企業は2662社(Webサイト掲載企業)となっており「日本のサプライヤーも100社以上が参加している」とMIH コンソーシアム CEOのJack Cheng(ジャック・チェン)氏は述べている。
JAPAN MOBILITY SHOW 2023では新たに、MIH コンソーシアムの中で確立したMIHプラットフォームをライセンス化し、商用サービスとして外部提供していくことを発表した。その第1弾として、MIH コンソーシアムの中から生まれたMモビリティにライセンス供与を行う。
Mモビリティは、MIH コンソーシアムのプラットフォームの商用化を目指して誕生した企業だ。MIHプラットフォームをベースとしたビジネスサービスを目指し、EVの設計、システム開発、エネルギーやクルマのデータプラットフォームまでの一連のサービスを提供する。B2Bモビリティ業界に特化しており、モビリティサービスプロバイダーやフリートオペレーター向けのEVソリューションの開発なども行う。インドのIT大手のTechMahindra(テックマヒンドラ)の支援を受け、国内においては住友商事傘下のEVサービス企業であるHakobuneと協業を進める。当面は日本、インド、タイをターゲットにビジネス展開を行う計画としており、2025年に製品投入を行う。
チェン氏は「EVの世界的な需要が高まっている中、MIH コンソーシアムのプラットフォームを基に前向きな変化をもたらす。商用EVと多様なソフトウェアツールを提供することでさまざまなB2Bクライアントにサービスを提供したい」と語っている。
JAPAN MOBILITY SHOW 2023でのアライアンス企業との集合写真。左からMIH コンソーシアム CEOのチェン氏、テックマヒンドラ エンジニアリングサービス部門グローバルヘッドのナラシマム・RV氏、Hakobune 代表取締役社長の高橋雅典氏、伊藤忠商事 エネルギー・化学品カンパニー 電力・環境ソリューション部門長の安部泰宏氏、ZFジャパン 代表取締役社長の多田直純氏[クリックで拡大] 出所:MIH コンソーシアム
MIH コンソーシアムとしては、ライセンスを供与することで、ライセンス供与企業が、MIHプラットフォームを採用したクルマを販売するごとにライセンス料金を得るビジネスモデルを想定しているという。これらで得たライセンス料は、MIH コンソーシアム内でプラットフォームを確立するために貢献した企業内で分配する仕組みだ。一方でライセンス供与を受ける企業にとっては、MIH コンソーシアムで確立されたハードウェア、ソフトウェアのプラットフォームを活用することで、独自でEVやEVを使った商用サービスの開発期間が大幅に短縮できる。また、採用したハードウェアプラットフォームによっては、フォックスコンの持つ強い調達力などを生かすことで低コストでの製品化も可能となる。
「ハードウェア面でのプラットフォームの活用だけではなく、ソフトウェア面での貢献も大きいと考えている。フリートマネジメントシステムやそれによって最適化される物流システム、これらの土台となるサイバーセキュリティなど“ソフトウェア中心のクルマ”となっていく中、こうしたソフトウェアをまとめて提供できる価値も大きくなっていく」とチェン氏は強みについて語っている。
今後は、MモビリティをはじめMIHプラットフォームを使用したクルマを年間10万台以上販売することを目指す。内訳としては、インドが約半数、タイが30%、日本が20%になる見込みだという。MIHプラットフォームを使用したクルマの販売額は「詳細は決まっていないが、2万米ドル(約300万円)以下の販売額にはなるのではないか」(チェン氏)としている。
MIHプラットフォームおよび同プラットフォームを使用したクルマの生産については、主にインドとタイで生産する計画だ。「インドには生産パートナーがいくつかあるためそこを使って生産をする。タイはフォックスコンの工場があるためそこで生産することになるだろう」とチェン氏は述べている。
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