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「設備頼りのビジネス」から転換を! 固定資産のデータ分析で見えることイチから分かる! 楽しく学ぶ経済の話(12)(5/5 ページ)

勉強した方がトクなのは分かるけど、なんだか難しそうでつい敬遠してしまう「経済」の話。モノづくりに関わる人が知っておきたい経済の仕組みについて、小川さん、古川さんと一緒にやさしく、詳しく学んでいきましょう!

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移りゆく経済状況の中で日本企業はどう動くべきか

さて、12回にわたり経済の構造と、その中身について解説していただきました。難しい用語や、理解しにくい概念などもありましたが、経済に対する理解度がぐっと深まったように思います。


日本経済の特徴なども良く分かったのではないでしょうか。


はい。この先日本はどのように変化していくのでしょうか?


日本経済は1997年をピークにして停滞が続いていますが、2010年頃まではバブル期/ポストバブル期の調整時期が続いたとも解釈できそうです。もちろん、リーマンショックで2008年、2009年と経済が落ち込んだこともありますが、2010年以降から少しずつ回復傾向の兆しが見えているのも事実ですね。


そうですね、ただしその間にさまざまな変化が起こっています。特に日本では、少子高齢化が進み、人口が減少局面に入っていますね。


はい、その分社会保障負担は増え、家計の可処分所得が目減りしている面も見受けられます。一方で、日本の家計は他国から見れば過大な現金/預金を保有しているわけですね。フローは減っているけど、ストックが多いというのが日本経済の現在の特徴です。


家計の金融資産の大半は高齢層が保有しているという特徴もあります。いかに高齢層がお金を使いたくなるようなモノやサービスを生み出していくか、ということも企業にとっての課題となりそうです。


その企業にも大きな変化があり、バブル期/ポストバブル期の過剰な状態が、他国並みに落ち着いてきたようにも見受けられますね。


そうですね。長い停滞期間を経て、企業活動が変化する転換期を迎えているとも考えられます。国内事業への投資余地が出てきているようにも見えますし、事実そのような傾向も確認できましたね。


投資と生産性向上を図りながら、付加価値とその分配を増やしていく活動をするにはどのように振る舞えば良いのか、この連載記事のさまざまなところにポイントがちりばめられていると思いますよ。


ここまで読んだ上で、もう一度第1回から読み直してみると、新しい発見がたくさんあるのではないでしょうか。


そうですね、企業に余力が出てきていること、日本は相対的に安くなってきていること、輸出が相対的に少ない国であること、固定資産の蓄積が高い水準であること、日本特有のさまざまなポイントがありそうです。これをうまく生産性の向上に生かせると良いですね。


はい、おっしゃる通りです。


バブル期/ポストバブル期の反省もありつつ、必ずしも固定資産に寄らない稼ぎ方も出ていますし、借入だけでない資金調達の方法や、資産の増やし方も多様になっています。他国の統計を見ると、日本とはまた異なる変化が良く分かりました。


仕事とはいわば、顧客の代わりに価値を生み出す代行業とも言えます。その代行費用が、付加価値です。「仕事」は合理的にその価値が生み出された上で、顧客がその対価を認めてくれて初めて成り立つものです。


はい、仕事の金額的価値が付加価値ということでしたね。


特に日本の製造業では、設備により生み出すモノに焦点が当てられ、とにかく安くて良いものを、大量に作って、価格競争をすることが優先されています。設備頼りのビジネスが当たり前になっていて、人の仕事の価値が軽視されがちです。


確かに、大量生産によって規模の経済を追うことばかりになっていますね。仕事とは何かを踏まえるならば、人口の減る日本において、もっとやりようがあるように感じます。


その通りです。特に製造業では、今まではモノを作って売ることが仕事として考えられてきたと思います。しかし既に安くて良いものがあふれた現代において、顧客の求めるものが変化しているのも事実ですね。


確かにバブル期/ポストバブル期はたくさん作って売ることで事業を拡大するタイミングだったのでしょう。ただし、仕事の質が変わりつつある中で、今後必要な投資や、稼ぎ方を考え直す転機を迎えているのかもしれません。


これまでのデータを踏まえるならば、投資は必要だけれども、固定資産だけに頼らない価値の高い仕事を作り出していくということがカギとなりそうです。


なんだか希望が見えてきた気がします。いろいろと教えていただきまして、ありがとうございました!


<了>

記事のご感想はこちらから!
⇒本連載の目次はこちら
⇒連載「『ファクト』から考える中小製造業の生きる道」はこちら
⇒連載「小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ」はこちら

筆者紹介

小川真由(おがわ まさよし)
株式会社小川製作所 取締役

慶應義塾大学 理工学部卒業(義塾賞受賞)、同大学院 理工学研究科 修士課程(専門はシステム工学、航空宇宙工学)修了後、富士重工業株式会社(現 株式会社SUBARU)航空宇宙カンパニーにて新規航空機の開発業務に従事。精密機械加工メーカーにて修業後、現職。

医療器具や食品加工機械分野での溶接・バフ研磨などの職人技術による部品製作、5軸加工などを駆使した航空機や半導体製造装置など先端分野の精密部品の供給、3D CADを活用した開発支援事業等を展開。日本の経済統計についてブログやTwitterでの情報発信も行っている。


監修者紹介

古川拓(ふるかわ たく)
TOKYO町工場HUB 代表

京都大学法学部卒。バンカーとして日米で通算15年間勤めたのち、2004年に独立。技術と創造力で社会課題の解決を促すソーシャルデザイン/プロデュースの道を進む。自ら起業家として活動しつつ、ベンチャーファンドの取締役、財団理事等を歴任し、国内外で活動してきた。

2017年よりスタートアップのエコシステム構築を目指すTOKYO町工場HUBの事業を開始。さらに2022年より和文化(工芸、芸能、食文化)を海外向けにプロデュースするTokyo Heritage Partnersを立ち上げ、現在に至る。

2009年〜2020年:東京大学大学院新領域創成学科の非常勤講師(持続可能な社会のためのビジネスとファイナス)を務めた。現在、東京都足立区の経済活性化会議他、東京観光財団エキスパート(ものづくり分野担当)、各種審議委員会の委員を務める。


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