工業が縮小する工業立国である日本、歪な「日本型グローバリズム」とは:「ファクト」から考える中小製造業の生きる道(7)(1/7 ページ)
苦境が目立つ日本経済の中で、中小製造業はどのような役割を果たすのか――。「ファクト」を基に、中小製造業の生きる道を探す本連載。第7回目は日本企業特有のグローバル化の姿である「日本型グローバリズム」についてのファクトを共有していきます。
統計データという事実(ファクト)から、中小製造業の生きる道を探っていく本連載ですが、今回は第7回となります。この連載では、われわれ中小製造業がこの先も生き残っていくために何が必要かを見定めていくために、以下の流れで記事を進めています。
- 日本経済の現状を知る
- その中で起きている変化と課題を把握する
- あるべき企業の姿を見定める
- 今後考えていくべき方向性を共有する
ここまでで「日本経済の現状」として、日本は平均給与などの主要な経済指標で見ると、1990年代の最先進国の一角から、今や「凡庸な先進国」にまで後退し、特に「労働生産性」が低いという特徴が分かりました。第5回からは「経済の変化のポイント」に着目点を移し、まず日本は「物価」が停滞していることを取り上げました。そして前回の「日本は本当に『貿易立国』なのか、ファクトに見える真実」は「為替」が長期的にみて円高に推移する中で、1990年代に国際的な「物価水準」が極めて高い時期があり、その後徐々に低下していく状況にあることが見えてきました。
日本は1990年代の経済が強く物価の高い国から、長い停滞を経て現在は凡庸で主要国の中で中程度の物価の国へと立ち位置を変化させたことになります。また、為替とも関係の深い輸出や輸入などの「貿易」についてもファクトを確認したところ、日本は輸出も輸入も先進国の中では極めて少ない水準で、ドイツや韓国のような「貿易立国」というよりも、むしろ「内需型経済」であることが確認できました。
なぜ日本は、ドイツや韓国のように工業が盛んであるにもかかわらず、貿易が少ないのでしょうか。その要因は「日本型グローバリズム」とも呼べるような日本特有のグローバル化にありそうです。今回は、企業のグローバル化について焦点を当て、ファクトを共有していきます。
GDPの産業別推移に見る国ごとの特徴
本連載第2回で各国の国内総生産(GDP)は、支出面、生産面、分配面があることを述べました。この中でもよく知られているのが、消費や投資など支出面のGDPですね。日本は、家計の消費支出が停滞し、投資(総資本形成)が減少しています。その反面、政府の消費支出が増大していて、全体としては30年近くGDPが停滞しています。
では、このような支出面だけでなく、生産面についてはどうなっているのでしょうか。今回はまずGDPの生産面についてファクトを共有するところから始めましょう。図1は米国のGDPにおける生産面のグラフです。
GDPの生産面における指標は、第一次産業や工業、一般サービス業など、産業ごとの付加価値(GDP)を表したものになります。どのような産業の規模が大きく、成長しているかを読み取れるため非常に興味深いものとなっています。
この産業の分け方は国際標準産業分類(ISIC rev4)に従ったものになっています。第一次産業には農業、林業、漁業が含まれます。一般サービス業には販売業、運送業、修理業、飲食業、宿泊業などが入ります。専門サービス業は専門技術職、士業などが対象となります。
米国では工業と一般サービス業の規模が大きく、成長もしていますが、それよりも公務・教育・保健の比率が大きい産業構造であることが分かります。公務の中に「防衛産業」も含まれますので、その影響も大きいのではないでしょうか。
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