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製造業は本当に「日本の稼ぎ頭」なの? 実力値をデータで確かめよう小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ(1)(1/2 ページ)

ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。第1回では、国内産業の稼ぎ頭と言われる製造業の「実力値」を確かめます。

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最も規模の大きな産業とは?

 この度不定期の連載を始めさせていただくことになりました、株式会社小川製作所の小川と申します。普段は、都内で溶接やバフ研磨などの金属加工を受託するいわゆる町工場を経営していますが、趣味で経済統計データをグラフ化して共有する活動をしています。

 以前は「『ファクト』から考える中小製造業の生きる道」という連載を執筆させていただきました。統計データを基に日本経済の立ち位置を確認し、中小製造業が今後目指すべき方向性を探っていくというストーリーだったのですが、おかげ様で大変ご好評いただいたとの報告をいただいております。

 今回からは当社ブログで数多くの経済統計データを可視化していく中で、改めて皆さんと共有したいグラフや、SNSなどで反響の大きかったテーマを中心に、気の向くままにご紹介していくというスタイルとさせていただく予定です。

 タイトルの通り、気軽にスキマ時間で読んでいただき、皆さんのビジネスなどで役立つような情報を共有していければと考えています。どうぞ気長に、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。

 今回は、当社も含めた私たち日本の製造業の、「実力値を可視化してみよう」というテーマでお送りします。以前の連載記事でも取り上げましたが、実は日本は先進国で唯一、製造業(工業)の経済規模が縮小している国です。

 先進国では「製造業からサービス業への転換が進んでいく」といったこともよく耳にします。「工業立国」「貿易立国」のイメージが強い日本ですが、製造業は国内産業の中でどのような位置付けなのでしょうか? 統計データを可視化してざっくりと把握してみましょう!

日本はGDPの4分の1が工業

 それでは前回連載からの用語のおさらいです。まずは「GDP」から。GDPはGross Domestic Productの略で、日本語にすると国内総生産です。国内で生産された付加価値の合計値を意味します。

 ここで言う「付加価値」とは、事業活動によって加えられた金額的価値のことです。もう少しビジネス寄りの表現をすれば、付加価値は売上高から外部購入費用を差し引いたもので、粗利に近いものです。言い換えれば、「仕事の金額的価値」そのものということになりますね。

 それでは各国GDPに占める産業別のシェアを眺めてみましょう。主要国の産業別GDPのシェアを比較したものが図1です。


■図1:GDPの産業別シェア各国比較(2019年)[クリックして拡大] 出所:OECDの「Gross domestic product」を基に筆者作成

 「工業」は一般的に鉱工業とも呼ばれますが、製造業に鉱業を加えたものです。図中に示されている主要国においては、ほぼ製造業に当たるとお考えください(産業の区分名称については、記事末の補足説明をご参照ください)。

 製造業が盛んな日本、ドイツ、韓国は比較的工業のシェアが大きいですね。日本はGDPの約4分の1が工業によるものということになります。日本では製造業(≒工業)が、最もGDPを稼ぎ出している最大産業だと分かります。

 一方、製造業離れが進んでいるといわれるアメリカ、イギリス、フランスは工業のシェアが小さく、いずれも15%未満です。その代わり、これらの国々では公共性の高い産業である公務・教育・保健や、専門性の高い産業である専門サービス業のシェアが高くなっています。

労働者数でも比較してみよう

 次に産業全体に占める工業の労働者シェアについても比較してみましょう。図2をご覧ください。


■図2:労働者数の産業別シェア各国比較(2019年)[クリックして拡大] 出所:OECDの「Population and employment by main activity」を基に筆者作成

 実は工業の労働者数シェアは、どの国でも、GDPのシェアほど高いものではありません。つまり、工業は比較的少ない労働者数で、高い付加価値を生み出している産業とも言えますね。

 工業の盛んな日本、ドイツ、韓国では労働者数シェアが2割弱となっています。アメリカ、イギリス、フランスでは1割前後です。その代わりこれらの国では、公務・教育・保健や専門サービス業の労働者数シェアが高いのが特徴的です。一方で日本は、公務・教育・保健や専門サービス業の労働者数シェアが低く、産業構造がイタリアや韓国に近くなっています。

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