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ODMメーカーの種類と特徴、そして選び方のポイント【前編】ODMを活用した製品化で失敗しないためには(3)(2/2 ページ)

社内に設計者がいないスタートアップや部品メーカーなどがオリジナル製品の製品化を目指す際、ODM(設計製造委託)を行うケースがみられる。だが、製造業の仕組みを理解していないと、ODMを活用した製品化はうまくいかない。連載「ODMを活用した製品化で失敗しないためには」では、ODMによる製品化のポイントを詳しく解説する。第3回のテーマは「ODMメーカーの種類と特徴、そして選び方のポイント」だ。

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単発生産か一定期間の定期的な生産かを調べる

 製品を生産する場合、単発生産と、「量産」といわれる一定期間の定期的な生産がある。

 単発生産とは、一度に複数個を生産して終了する場合だ。該当する製品は、治具や設備、特殊な装置、イベントでの配布物や限定品などがある。一度に数個の生産であれば、作り方はあまり気にする必要はなく、何とか手作業で数個を組み立てればよい。100〜1000個の生産となると、数が多いため簡単な治具を作製して生産する場合もあるが、基本的には数個の生産の延長上の生産方法と考えてよい。

 一方、一定期間の定期的な生産とは、たとえ毎月1個の生産であっても数カ月から数年かけて複数回に分けて生産することだ。家電製品や雑貨などが当てはまる。これには、単発生産とは別のスキルが必要になる。それは、一定期間にわたり定期的に複数の製品を決められた方法で正しく組み立てるスキルだ。

 一定期間にわたって定期的に生産すると、その期間中に製品を組み立てる作業者が変わったり、ある生産と次の生産で時間が空くため、作業者が組み立て方を忘れたりすることがある。そうすると、ある時期から組み立て方が変わり、製品の組み上がり状態が微妙に異なってくる。そして、それが不良品の発生につながる場合があるのだ。

 よって、この可能性を最小限にするために、組み立て方を記載した作業標準書や、組み立て方を画一化する治具などが必要になる。他にも多くの対応方法があり、それらをまとめて「品質管理」という。

単発生産と一定期間の定期的な生産の違い
図3 単発生産と一定期間の定期的な生産の違い[クリックで拡大]

 つまり、これから作ろうとする製品を、一定期間にわたって定期的に生産したいのであれば、品質管理のスキルを持ったODMメーカーを選定しなければならないのだ。

 より大量で、より長期間にわたって、同じ製品を作り続けた経験のある企業の方が品質管理のスキルは高いといえるため、これから作ろうとする製品の想定する生産数量と生産期間以上の実績があるかを聞けばよい。

 以前、筆者がODMメーカーを選定しているときに「量産の経験はありますか?」と質問したところ、「カートンに製品を入れるだけですね。簡単です」と返事があるだけで、品質管理に関わる話は出てこなかった。量産といえば品質管理がとても重要であるが、その知識がなかったのであろう。もちろん、このODMメーカーは選定しなかった。 (次回へ続く)

⇒ 連載バックナンバーはこちら

筆者プロフィール

小田淳

オリジナル製品化/中国モノづくり支援
ロジカル・エンジニアリング 代表
小田淳(おだ あつし)

上智大学 機械工学科卒業。ソニーに29年間在籍し、モニターやプロジェクターの製品化設計を行う。最後は中国に駐在し、現地で部品と製品の製造を行う。「材料費が高くて売っても損する」「ユーザーに届いた製品が壊れていた」などのように、試作品はできたが販売できる製品ができないベンチャー企業が多くある。また、製品化はできたが、社内に設計・品質システムがなく、効率よく製品化できない企業もある。一方で、モノづくりの一流企業であっても、中国などの海外ではトラブルや不良品を多く発生させている現状がある。その原因は、中国人の国民性による仕事の仕方を理解せず、「あうんの呼吸」に頼った日本独特の仕事の仕方をそのまま中国に持ち込んでしまっているからである。日本の貿易輸出の85%を担う日本の製造業が世界のトップランナーであり続けるためには、これらのような現状を改善し世界で一目置かれる優れたエンジニアが必要であると考え、研修やコンサルティング、講演、執筆活動を行う。

ロジカル・エンジニアリング Webサイトhttps://roji.global/

著書

製品化 5つの壁の越え方: 自社オリジナル製品を作るための教科書中国工場トラブル回避術 原因の9割は日本人

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