ポリエチレンの基礎知識、LDPEやHDPEとは?:プラスチックの基礎知識(1)(2/2 ページ)
産業技術総合研究所 官能基変換チーム 主任研究員の田中慎二氏がプラスチックの基礎知識について解説する本連載。今回は最も広く使われているプラスチックの一つであるポリエチレンの性質や構造などを紹介します。
ポリエチレンの合成
ポリエチレンは、「エチレン」というガスを触媒存在下で重合させることにより合成されます。エチレンガスは石油のナフサから得られるため、ポリエ一レンは石油製品の一つです。LDPEとHDPEのどちらができるかは、反応条件によって変わってきます。
LPDEは、HDPEと比べて高温/高圧下の条件で合成を行う必要があります。HPDEは、低圧条件でエチレンを重合させることで合成されます。重合には触媒が用いられますが、塩化チタンと有機アルミニウム化合物を混合したチーグラー・ナッタ触媒と呼ばれる触媒がポリエチレンの普及に貢献した最も有名なものです。さらに、カミンスキーらによってメタロセン触媒が開発されたことにより、分子量の制御が容易となり、ポリエチレンの用途の幅がさらに広くなりました。
ポリエチレンのバイオマス化が注目される背景
近年、低炭素化社会の実現に向けて、石油由来のプラスチックから、バイオマス由来のプラスチック、すなわちバイオマスプラスチックへの転換が進められています。ただし、石油産出の主目的は燃料であり、プラスチック製造には余った石油を用いるため、プラスチック使用は石油の消費量にはあまり影響しないという意見もあります。
そのような中で、ポリエチレンは、構造が単純な他、使い捨て用途が多くそれらは通常使用後に焼却されることになるため、バイオマス化に対する需要が高く、最もバイオマス化が進んでいるプラスチックでもあります。バイオマスから合成されたものはバイオポリエチレンと呼ばれています。
これらは、サトウキビから得られる廃糖液などからバイオエタノールを生産し、原料となるエチレンへの変換を経て合成されています。ただ、最も進んでいるといっても、シェアとしてはポリエチレン全体の10%程度しかありません。これは、「石油由来製品と比較するとコストがかかること」「生産設備が少ない」「生産量拡大のためには可食物を利用する必要が生じるため食料問題と競合する」といった障害があるためです。シェア拡大に向けてこれらの解決が待たれます。(次回へ続く)
筆者代表紹介
産業技術総合研究所 官能基変換チーム 主任研究員 田中慎二(たなか しんじ)
博士(理学)。2021年まで名古屋大学にて助教として勤務。2021年より現職。専門は、有機合成化学。特に、触媒を用いた物質変換技術、キラル物質合成技術の開発を中心に行っている。近年は、バイオプラスチックの開発も推進している。2017年有機合成化学奨励賞。
参考文献:
[1]矢野経済研究所プレスリリース「ポリエチレン市場に関する調査を実施(2023年)」
[2]Recent developments in bio-based polyethylene:Degradation studies,waste management and recycling,M.Burelo,J.D.Hernandez-Varela,D.I.Medina,C.D.Trevino-Quintanilla, Heilon 2023,9,e21374.
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