日立は「大規模言語モデルのEMSを目指す」 業務特化型LLMの構築/運用支援開始:製造ITニュース
日立製作所は専門業務に適した大規模言語モデルの構築や継続的な改善などを支援する「業務特化型LLM構築・運用サービス」と実行環境の構築や運用を担う「生成AI業務適用サービス」を開始する。
日立製作所は2024年8月29日、専門業務に適した大規模言語モデル(LLM)の構築や継続的な改善などを支援する「業務特化型LLM構築・運用サービス」と、実行環境の構築や運用を担う「生成AI業務適用サービス」を同年10月1日から開始すると発表した。サービス開始当初は、金融業界やコンタクトセンター向けに提供する。
社内ノウハウを基にLLMの本格的な業務適用を支援
業務特化型LLM構築・運用サービスは、日立製作所が社内で蓄積してきた生成AIの業務適用時のノウハウを基に、企業固有のナレッジデータの選定や抽出、LLMの再学習、業務に応じた規模のLLMの構築や改善活動までを一気通貫で支援する。さらに、生成AI業務適用サービスでは、オンプレミス環境を含めて、LLMと生成AIのアプリケーションの実行環境の構築、運用の支援を行う。両サービスによって、企業におけるLLM活用の試行段階から業務適用フェーズへの移行を支援する。
日立製作所 クラウドサービスプラットフォームビジネスユニット事業主管 兼 生成AIアプリケーション&共通基盤室(日本)室長 元山厚氏は「企業が生成AIを本格的に業務適用する上では、2つの大きな壁がある。回答精度の不足感や、LLMの学習環境の構築におけるノウハウの不足、投資の難しさだ」と説明する。
回答精度の不足感に対しては、企業固有のデータをLLMに連携させるRAG(Retrieval-Augmented Generation)を使うという解決策もあり得る。ただし、複数ドキュメントを横断した回答が得られにくい点、企業固有の用語や業界の専門用語などのドメインナレッジを使った質問に対して十分な回答精度が出にくいといった課題がある。
これに対して日立製作所は、ファインチューニングなどの手法で複数ドキュメントを事前学習させた業務特化型LLMの構築を提案する。これによって専門用語などにも十分な回答精度で対応できるようになるという。
日立製作所は業務特化型LLMの業務活用可能性を検証した例として、社内認定資格である「JP1認定コンサルタント」への挑戦事例を取り上げた。同資格は、統合システム運用管理ソフトウェア「JP1」のコンサルタントに関する最難関の資格と位置付けられている。取得には複合的な知識が求められるが、ファインチューニングした汎用LLMにRAGを組み合わせるなどして、試験合格相当の回答力を実現した。
製造分野でも業務特化型LLMが大きく活躍すると見込む。ベテランのエンジニアのノウハウを継承するといった用途では、図面や判断基準を示したドキュメント、マニュアルに加えて、製造現場のベテランのエンジニアの暗黙知を形式知化したデータをLLMに学習させることで効果的な支援が可能になると想定される。
この他、金融システム開発の要件定義から設計までの上流工程に対する、業務特化型LLMの活用なども検証している。具体的には日立製作所の品質管理ノウハウを学習させた業務特化型LLMを構築し、金融システムの設計書レビューの効率化などを図る。
学習環境の整備については、日立製作所が持つ大規模なGPUサーバを提供する他、データセンターの構築ノウハウなどを基に企業の支援を行う。これらを総じて元山氏は、「企業のデータを受け取り、われわれのGPUサーバを使って業務特化型LLMを構築して提供する。実質的に『LLMファクトリー』と呼べるようなサービスになっている。LLMのEMS(製造受託サービス)を目指したい」と語った。
日立製作所は今後、業務特化型LLM構築・運用サービスと生成AI業務適用サービスを、ドメインナレッジを多く有する製造や交通インフラなどのOT(制御技術)領域で、現場のトラブル対応や生産工程の高度化を図る用途などにも適用していく計画だ。
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