NTTが新会社「NTT AI-CIX」設立 連鎖型AIで製造や配送計画を最適化:製造マネジメントニュース
NTTはAIの業種、業界横断での連携を支援する新会社「NTT AI-CIX」を設立すると発表した。
NTTは2024年8月24日、AI(人工知能)の業種、業界横断での連携を支援する新会社「NTT AI-CIX」を同月26日に設立すると発表した。「連鎖型AI」の社会実装を通じて、製造業など多様な業界を含むサプライチェーン全体の最適化実現を目指す。
業界横断のAI連携目指す
NTT AI-CIXの資本金は19億5000万円で、NTTが100%株主となる。代表取締役社長には社家一平氏が就任する。本社所在地は東京都港区にある品川シーズンテラスで、社員数は設立当初は30人程度としている。顧客の課題抽出やPoC(概念実証)、サービス開発に加えて、AIのアルゴリズムをプラットフォーム上で提供する事業を展開する。
連鎖型AIとは個社ごとに分断された状態でAIではなく、AI同士が情報連携することで全体最適化を図れるようなAIの在り方を指す。NTT AI-CIX 代表取締役社長 社家一平氏は「NTTがIOWN構想の中で掲げてきた、『デジタルツインコンピューティング』の概念を一部具体化していく形だ」と説明した。
現時点で事業の対象とする領域としては「流通サプライチェーン」と「農業の卸し売り」の2つを挙げる。流通サプライチェーンでは、小売業や卸売業、製造業のサプライチェーンをそれぞれ連携させることで、需要予測の高精度化を図る。サプライチェーン全体で製造や配送計画の最適化を目指す。これによって、例えば製造業の立場から見ると「小売店の需要予測や販売実績が分かれば、製造計画の最適化が図りやすくなる」(社家氏)メリットがある。
農業の卸し売りでは、生産者と小売業の間に卸売市場を仮想化した上で、両社の需給マッチングや配送計画の最適化を図る。生産者の需要に合わせて小売業が効率的に配送する未来を目指す。この他、将来的には電力などのエネルギー業界や、製造業の完成品メーカーとサプライヤー間のモノの流通にも事業範囲を広げていく可能性があるとする。
加えて、幾つかのAI関連サービスを合わせることで、NTT AI-CIXは2030年までに約200億円規模の売り上げ創出を目指す。
今回、新会社を設立した理由について、社家氏は「AIを通じて顧客課題を解決していくには、顧客が持つデータが必要になる。当社ではAIに関するR&D(研究開発)は進めておりモデル開発の技術力はある。だが、顧客に価値提供するには、事業として顧客とつながり続けていかなければならない。複数の業界の中でAIを連携させることで、省エネや省人化など全体的な効率化を進めることで、社会課題解決を目指す」と説明した。
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