「IOWN」はLLMに何をもたらすか、NTTが進める次世代通信とAIの研究開発:モノづくり最前線レポート(1/3 ページ)
NTTが同社の技術研究の成果などを展示紹介する「NTT R&Dフォーラム2023」を開催中だ。基調講演では代表取締役社長の島田明氏や執行役員研究企画部門長の木下真吾氏が、「IOWN」や大規模言語モデル「tsuzumi」を中心にR&Dの取り組みを紹介した。
日本電信電話(NTT)は2023年11月14日〜17日にかけて、同社の技術研究の成果などを展示紹介する「NTT R&Dフォーラム2023」をNTT武蔵野研究開発センタ(東京都武蔵野市)とオンラインでハイブリッド開催中だ。開催前日の同月13日には、報道陣向けに、NTT 代表取締役社長 島田明氏や同社 執行役員研究企画部門長の木下真吾氏が登壇する基調講演を行い、光ベースの次世代ネットワーク基盤構想「IOWN」や独自開発した大規模言語モデル(LLM)「tsuzumi」を中心にR&Dの取り組みを紹介した。
2025年度から「IOWN2.0」を提供予定
NTTの掲げるIOWN構想は、光電融合デバイスを用いることによって、低消費電力かつ大容量/高品質、低遅延のネットワーク基盤を段階的に実現しようとするものだ。
NTTのロードマップでは2023年にサービスを開始した、2拠点間で光波長を占有して通信可能な「APN(All Photonics Network)」を軸に据えた「IOWN1.0」に続き、ボード間接続を光化する「IOWN2.0」を2025年度から提供予定だ。IOWN2.0では、スイッチボードに小型の光エンジンを搭載することで、CPUやGPUなどのxPUとメモリ間の接続を電気信号ではなく光信号で行えるようにする。これによって電力効率を従来より大幅に高められるため、サーバの低消費電力化に貢献するとしている。現在、光エンジンの研究開発はおおむね完了しており、実用化に向けた試験を実施している。
現在、用地不足のためにデータセンターを都市部に新設することが難しくなっている。一方で郊外にデータセンターを設置した場合、主要都市圏との遅延時間を考慮する必要があるため、「従来は都心(大手町を想定)から約35km圏内にしかデータセンターを増設できなかった」(木下氏)とした。しかし、APNを活用することで、新設可能なエリアを約70km圏内にまで拡大できる。木下氏はデータセンターの増設可能なエリアを広げることで、「将来的に東京だけでなく、国内や世界の各都市へと展開していくことで、APNのネットワークを拡大する戦略を考えている」と説明した。
さらにNTTはIOWNを活用した新たなアーキテクチャとして「DCI(Data Centric Infrastructure)」を構想している。DCIはサーバのコンピューティングリソースを細分化して、処理目的に応じてリソースを組み合わせて配置の最適化を行うアーキテクチャを指す。IOWN1.0の段階では、サーバやストレージ単位のコンピューティングリソースをAPN経由でつなぐことで、広域な分散ネットワークを構築する。IOWN1.0に続くIOWN2.0以降では、第3/4世代の光電融合デバイスを利用してサーバ内のボード単位、ボード上のチップ単位での内部ネットワーク構築を目指す。
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